朝食の準備

 お姉様が私を嫌っていないことにホッとしつつも、これからのことを少し考える。私は本当にお姉様が知っているアリシアと同じことをするのだろうか?

 少なくとも、今は違うと…思いたい。けれど、私はこれからもお姉様と一緒にいていいのかな…


 コンコンと部屋がノックされ、少しの間があった後、アンさんが部屋に入って来た。


「朝食の準備ができたのですが…起きていらっしゃったのですね。それに…お嬢様も起きているのは珍しいですね」


「そう…だったかしら。だけど、そうね、今までは少し不安だったからあまり早く寝れなかったけれど、昨日は早く寝れたからかしら?」


 私のことだ。きっとお姉様は私がどんな行動をとるか、その時にはどうするかを考えていたんだと思う。だから寝れなかった。だけど、その不安は残ったままなのでは?


「不安は解消されたのですか?」


「うーん、どうなのかな?とりあえず、アリシアが可愛いってことと、私に可愛い妹ができたってことはわかったかな」


「…お姉様…」


 それはなんの解決にもなっていませんし、私はお姉様が思っているような人間ではありません。私自身、私のことなんて何もわかっていないのですから…

 それに、いつの日にか、私がお姉様を害する存在になるのかもしれないのですよ。だって、私の親はあの人たちなのですから…


「それで、あの男が何か言ってた?」


 あの男、おそらく父のことでしょう。お姉様はもう、父とは呼ばないのですね。それは当たり前でしょうが、私は…


「はい。あの男が一緒に朝食をとるために、アリシア様をお呼びです」


「私だけ…ですか?」


「…はい」


「…わかりました、ありがとうございます。それで、お姉様のお料理は確保できていますか?」


「はい。アリシア様が食事をとっている間に、お嬢様のお食事はこちらに運ばせます」


「運ばせる?アンさんではないのですか?」


「私のことはアンとお呼びください。それに、一応私はアリシア様の専属侍女ということになっていますから、アリシア様の側を離れると怪しまれてしまいます」


「そう…ですね、それで、その人は信頼できるのですか?」


 すぐに父に報告するような人だったら困るのですが…


「はい。彼女も信頼できる者ですよ」


「そうですか…それはよかったです。ではお姉様、申し訳ありませんが行ってきます」


 本当は行きたくはない。それに、お姉様と一緒に食事をしながらもっと話してみたい…とも思う。でも、行かないといけない。

 私が行かないと、あの人たちは私の部屋に押しかけてくるのだろう。そうなってしまうと何故かダメなような気がする。だから、ここは我慢するしかない。


 それにしても、お姉様の味方がアンさんや料理長以外にもできてよかった。


 父が命令して、みんなでお姉様をいない者として扱うようなことをするかもと思っていたから、少しでもお姉様のことを思ってくれる人がいてよかった。

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