姉妹

 目が覚めると、目に映ったのは見覚えのない天井であり、私が起き上がるために手をついたものは、今まで触ったことのない、ふかふかのベッドだった。


 そうだ…私は貴族の家に来たんだっけ…


 それで昨日はシェリア様とお話をして…それからシェリア様とアンさんが話していたのはなんとなく覚えているけど…私がベッドに入った記憶はない。


 私、いつベッドに入ったんだっけ?シェリア様とはちゃんと話せた?


 最後まで覚えていないからか、すごく不安になってしまう。どうしよう…シェリア様に勘違いされたままだったら……


 勘違い…か。本当に…?私はあの両親の子供なのに?本当に勘違いって言える?


 目の前が暗くなる。自分が怖い。シェリア様に未来のことを聞いたから余計に…私は両親と同じようになる。他人を貶め、喜ぶ私に…


「はは…私はどうしたら…いいのかな…」


 死ぬ勇気はない。死にたくはない…と思う。もしシェリア様が私を殺したいというのであれば、受け入れると思う。だけど、自分で選ぶことはできない…


「…シェリア様…」


 金髪の綺麗な女の子。私より一つ年上で、少し…そう、ほんの少しだけ、ポンコツのように思える女の子。容姿はまるで、今隣で眠っているお人形のような女の子。


 違う…よね。だって、本物のお嬢様だよ?確かにこのベッドは広いけど、アンさんがここでは寝かさないよね。だって、私は、あの人たちの子供なのだから、信頼できるはずがない。そのはずなのに…


 すぅ…すぅ…と規則正しい寝息が聞こえる。


 本当にこの人は…どうして、私なんかと一緒に寝ることができるのでしょう。私なんて、床に捨てておけばいいのに…


「本当に綺麗な髪…」


 それに青い目。父の空色の目ではない。そのことがとても羨ましく思う。少し前までは、この目の色が好きだったのに、今はそう思うことができない。


 そっと、彼女の髪に手を伸ばそうとすると、青い目と目が合った。


「あっ、えっと、おはようございます。シェリア様…」


「…お姉ちゃん」


「えっ」


「私、前世は一人っ子だったから、妹が欲しかったの。だから、一度でいいから、私のことをお姉ちゃんと呼んで?」


「お、お姉ちゃん?」


「やっぱり昨日から思っていたけど、アリシアは可愛いわー!」


「お姉様!?」


 シェリア様に急に抱きつかれたことにびっくりして、お姉様と呼んでしまう。


「昨日も思ったけど、お姉様も良いわね。けれど、どうして?」


「私は姉の存在に憧れていたんです。それで、昨日つい呼んでしまって、ごめんなさい!」


「謝らなくていいの。私も妹が欲しかったし。これからはお姉様と呼んでね?」


「いいのですか?」


「いいの、いいの。けどね、アリシア。やっぱり私、思ったんだけど…」


 シェリア様をお姉様と呼んでいいと言ってもらえたことを嬉しく思ったけれど、次の言葉に身構えてしまう。続く言葉はなんだろうか?

 私は邪魔?だって、私がお姉様と敵対することは、お姉様の知っている未来では確実なのだから、当たり前だよね。

 

 目を瞑って、お姉様の言葉を待つ。


「アリシア、あなたはとてもいい子だもの。だからね、あの小説のアリシアには、絶対に私が何か嫌がることをしたと思うのよ!じゃなきゃ、あんなことをするはずはないわ!」


 やっぱり、お姉様は少し、人が良すぎるというか…もう少し、私があの悪魔たちの子供だということを思い出してほしいです。

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