フラクタル
夢の中でも夢を見る夢を見ていた。
日常を過ごすうち、不意に、これは夢だと気付いて、ベッドから起き上がり、そしてまた日常を過ごし、夢だと気付く。
これを、何回も繰り返していた。もう、何回目かもわからない。わかるのは、先ほども夢の中で夢を見ていたということだけ。
ようやく起き上がり、日付を確かめて外に出掛けると、不思議なくらい太陽と空がくっきりとして見えて、薄っぺらく感じた。それだけでなく、歩く人も、散歩中の犬も、街路樹も家も、道路も、輪郭がぼやけてハッキリしない。何か違う気がするが、何が違うのか判然としなくて、もやもやする。
不確かな違和感が、足の裏や背筋に這う。嫌な気分が這い出て、喉の奥に潜む。
不意に、空を見上げると、太陽を直視出来た。あれはにせ物の太陽だ。と言うことは、これもまた夢なのだろう。
夢だと確信し、目を閉じ、再び目をうっすらと開くと、そこはベッドの上だった。
やっぱり夢じゃないか、そう思いつつ、ベッドから降り、窓を開けた。外は静かで、誰もそこにはいない。窓の向こうには鉄格子がはまっていた。
どうやらまだ、夢の中らしい。
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