ゆりかご
生まれる前の夢を見た。
温かな水とそれを覆う壁の中、ぽっかりと浮かび、時折聞こえる外の音に驚いては手足をバタつかせ、覚醒とも言えない微かな意識の中、息をしていた。
そこの温度は風呂よりもぬるく、水よりも温かく、なんとも言えない心地好さがあった。何よりも、安心感が満ち満ちていた。眠っているようで、目覚めているようで、手足の自由はあまりなかったが、ここにいれば何も怖くはない、そう直感で理解できた。
叶うならば、ずっとこうしていたいような、そんな気持ちでいたが、安寧は唐突に終わりを告げた。
けたたましい轟音が水を通して小さな頭を揺らし、激しい振動が身体を嬲った。何が起こったのかさえわからぬまま、壁にヒビが入り、そこから水が溢れた。その流れに巻き込まれるようにして壁の外へ放られると、そこは白く、眩しい場所だった。鼻孔をくすぐる草の匂いと、身体を撫でる風の感触が新鮮で、思わず声をあげた。
その瞬間、夢が終わった。カーテンの隙間から溢れる朝日が、あのヒビを思わせた。
いったい誰から生まれたのか、それすらわからず、真新しい朝の中、一人目を覚ました。
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