新人類

 地球が出来上がってから滅びるまでの夢を見た。

教科書で習った通りのそれを、タイムラプス動画で見ているようなものだったが、とにかく目まぐるしくて頭が痛くなった。

 生きとし生けるものが淘汰され、文明が生まれる度に格差が誕生し、絶滅と再生を繰り返しながら掻き消えていく自然を眺めて、胸が押し潰されるような感覚を抱いた。

あんなにも死と隣り合わせに生きながら、あんなにも幸福そうに笑う猿に似た人類に愛しさを覚えた。死相を浮かべた現代人のそれとは似ても似つかぬほど、彼らは生き生きとしていた。

 ほどなく、真の幸福は終わりを迎え、人間が作り上げた文明は利便性と引き換えに、人間の動物性を駆逐し始めた。

 人間の生活は豊かになったが、彼らに元の人間性はない。けれどどこか幸せそうだ。もう動物ではないからだろうか。再び、この地球が更地になると、奇妙な満足感が胸を満たした。

終わってくれて良かった。本心からそう思った。

目が覚めて、地球が残存していることに絶望した。きっと、もう二度とあの幸福を感じることはないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る