ゆめゆめ

弌原ノりこ

熱帯夜

 脳が爛れる夢を見た。

表皮が焼け落ち、脳漿が溢れ、それらが混ざりあって焦げ付き、やがて一つの大きな黒い塊になる夢を見た。

肉が焼ける臭い、脳漿の臭い、焼ける感触、脳漿が脳の表皮に触れる感触、どれもが妙に生々しかった。

 これは夢だ。と気がつけば何も恐ろしいことはなかったのに。目覚めてすぐに頭に触れた。そこに硬い頭蓋があることを確かめねば、不安だったのだ。

頭蓋の上には髪が生えた頭皮があり、その下に確かな頭蓋の硬さを感じ、酷く安堵した。

 良かった。脳漿は溢れ落ちていない。

考えてみれば、脳の焼ける臭いは火葬場のそれと同じだったし、脳漿の感触はカルキを含んだプールの生温いそれだった。

結局のところ、ただの想像の産物だったと言うのに、酷く恐ろしい感情に襲われてしまった。

 時刻は深夜の一時半を過ぎたばかり。

もう一度眠る気はしなかった。

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