全中決勝の日

第5話 荻原球太 8月4週

「荻原、今日も頼むで~」

「キューちゃん、今日も完封で」


 男だらけの暑苦しい円陣の中で、桜井と和賀が言った。俺は二人の顔を見て、にっこり笑顔で返事してやった。――もちろん、イエスだ。


 オーイオーイとチームメイトたちの地響きみたいな声が円陣の中でこだまする。


 何が目的か分からないこの試合前の声出しと円陣が俺はたまらなく好きだった。仲間たちと顔を見合わせ、戦地に赴く心づもりを決める。


 俺たちの円陣の外はいつもと違う。

 全国大会決勝だとか、バカでかい初めての球場だとか、そういう色んなものが俺たちを惑わせていた。浮足立っていたといつやつだ。遠征の夜はちょっと夜更かししてしまう、みたいな。


 でも、円陣の中に入れば。

 この灼けるグラウンドと男たちのむさ苦しい円陣の中に一度入ってしまえば。


―――俺たちは、戦士の顔つきになる。


 このチームで、絶対に全国優勝する。それが、俺の中学三年間の目標だった。


「絶対勝つぞォォ―――」


 ぶわっと円陣全体が膨らむ。俺たちは大きく息を吸い込んで――


呼応オウッ!」


 耳が壊れてしまいそうな大声をあげて、全員の心に宿る、真っ赤な情熱の導線に火をつけたのだった。


 太陽が燦燦と照り付ける8月4週。俺たちの、そして俺の中学最後の試合が幕を開けた。


***

対戦表


『白銀中学』 スターティングメンバー

順 ポジ 名前  学年  打 パワー 走 守 肩 精 特性    利き

1番 投 荻原球太 3年  B  B   A  B SS  S カリスマ  右打右投

2番 中 桜井雅人 3年  A  D   S  A B   B 流星    左打右投

3番 遊 田辺裕也 3年  B  B   B  B A  C なし    右打右投

4番 一 新藤 晃 3年  S   S   E  D D  S 良打    左打左投  

5番 捕 山城太一 3年  C  C   C  A S  C リード〇  右打右投

6番 二 東 恭平 2年  D  C   C  S B   D 安定    右打右投

7番 三 清水 凌 1年  C  E   B  B C   F 成長期   右打右投

8番 左 江藤大河 3年  D  E   S  B A   B 強肩    左打左投

9番 右 江藤竜也 3年  D  E   S  A B   B 線上〇   右打右投 


チーム特性:我武者羅(意外性↑土壇場↑ 選手全員に逆境魂を付与)


               VS


『鳳院学園』 スターティングメンバー

順 ポジ 名前  学年  打 パワー 走 守 肩 精 特性    利き

1番 中 桂    3年  B  B   SS A A S なし    右打右投

2番 二 柊    3年  B  C   S  S  B  A なし    左打右投

3番 三 大和   3年  S   A   C  B A  A なし    右打右投

4番 捕 北条   3年  SS  SS   A  A  S  S なし    左打左投  

5番 投 椎名   3年  A  A   C  A  S  A なし    右打右投

6番 左 仙田   2年  A  B   B  B  S  A なし    右打右投

7番 右 繁田   3年  A  B   A  A S  A なし    右打右投

8番 遊 来田   3年  A  B   B  S  S  A なし    左打左投

9番 一 峰    3年  B  B   B  B B  A なし    右打左投 


チーム特性:常勝無敗(士気↑連携↑ 選手全員に選球センスを付与)


***

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