第9話 神と作戦会議

「ただいまー。疲れたー。お腹すいたー」


 家である居住空間の玄関に現れるとすぐ、那月はソファーへ向かい、着ていたジャケットを脱いで座り込んだ。


 そして那月の左髪につけられていたウサギのアクセサリーも長い耳がぐったりと垂れ下がって疲労を表していた。


「お帰りなさい那月。今日は大変だったわね」


 惣神そうしんを先頭に他の神たちも出迎える。


「おかえり那月。スピールの手入れは任せて、まず休むといい」

「さよう。三十三人の治療を一人でしたのだからな」

「ガーッハハハ、引くときは引かねばな」

「疲れて動けなくなってはいけないでッス」

「那月、汗は大丈夫?」

「欲張っていいことはねえからな。引き際が肝心だ」


「うん、そうするー。汗はとりあえず大丈夫。タクロー、何か美味しいものをお願い」


 神たちが答えたあと、那月は宅神たくしんに食事の用意を頼んだ。


「了解でッス」


 宅神がそれを受けると、那月の前にあるテーブルに三十センチほどの皿に盛られた料理が現れた。


「焼きうどんでッス。中央の山椒味噌さんしょみそとあわせて召し上がるとよいでッス」


「うわあ、おいしそう。いただきまーす」


 皿の右横にあるウサギの箸受けからピンクの箸を取ると、那月は言われたとおりに味噌をからめて麵を口に入れた。


「はふ、うん……、おいしい」


「それは良かったでッス」


 喜ぶ那月に、宅神も嬉しくなる。


「さて、那月が食事休憩をしている間、あのゾウ型の夜獣やじゅうをどう対処するか考えないとね」


 そう言って、銃神が他の神たちと作戦会議を始めた。


「通常、ゾウを仕留めるにはライフル弾やマグナム弾などの、高威力の物を使用する。スピールなら重光弾じゅうこうだんがそれに相当するが、どう思う?」


「うむ。確かに夜獣は人や獣の肉体的な特徴を持っている。だがその一方で魔物の部分も併せ持つ。見た目以上に存在力の容量があると考えていいだろう」


「ガーッハハハ、確かに。夜獣にも投げや打撃、関節をやれるが、あれは考えん方がいい」


「それじゃ普通に、スピールだけの攻め方でいいってこと?」


「いえ、それは無理だと思います」


 銃神、呪神、武神の意見から見えてくる結論に衣神いしんが言うと、惣神は否定した。


「さきほども見たように、あの長い鼻から負素ふそを放ちます。それは攻撃にも使えることを意味しています」


「鼻から出す前だったら一発で仕留めねえとな。魔力を嗅ぎつけ、攻撃をしかけた那月へ襲いかかってきちまう」


「現在、最強の攻撃手段は重光弾だが、他の夜獣でも五発以上撃って消している。一発でとはいかないだろうね」


「ガーッハハハ、頭を撃っても存在力がある限り再生するんだからな。急所もあてにならん」


「じゃあ、前やったみたいに転移射撃? でもあれ、あんまり効かなかったんじゃなかった?」


「しかも、重光弾では魔法円を消し飛ばしてしまう。炎のように滑らせることができないからな」


「仕掛けて撃って、仕掛けて撃ってじゃ、割に合わねえわな」


「普通に射撃してもいずれ接近されるのは予想できる。となればいかに夜獣を攻撃させないかだね」


 宅神、商神、銃神、武神、衣神、呪神から商神しょうしん、銃神と意見を出す。


そして神たちが、うーん、と考えていると、那月が箸を止めて言った。


「それだったら、吹っ飛ばすといいんじゃない?」

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