第2話

あれから半年経ったある日、私達は森を走っていた、暗殺者に追われている


「くっそ数が多い、シャドウバインド」


影が暗殺者を縛り上げ首を折る

一人一人は雑魚でも数が多すぎる

影の棘が暗殺者に襲いかかり暗殺者の攻撃を光の障壁が防ぐ


「魔力が足りない」

「私ももう……」

「お前だけでも逃げろ!」


残った全ての魔力を込めて魔法を発動させる


「吹き飛べぇぇぇ!!」


森を喰らい暗殺者を木々ごと影が飲み込む


「シャドウバイト」


魔力が枯渇し膝をつく

暗殺者を全員倒した訳では無いだろうがこれでだいぶ時間を稼げただろう

シエラは走り遠くへ逃げている

これなら……


「手こずらせやがって」


私情で光魔法の使い手を殺そうとはあの王子は中々見上げた精神だと私は笑みを浮かべ呟く

騎士の格好をした暗殺者が剣を振るう

何故こうなったのかそれは半年前の王子の件だった、王子は国王の指示で謹慎処分を受けていた

それで怒りが限界に達し王子は報復の為私兵を動かしていた、その数はなんと数百にも及ぶ

シエラがこの国の国境を抜ければ彼女は助かる

私は死んでもいい、だがあいつは殺させない

残っていた一本のナイフで剣を弾き首元を切り裂く


「来やがれ!! 雑魚どもが!!」


剣を拾い魔法を諸共せずに全力で振るう

メイドになってからも戦闘の訓練は続けていた

昔からなんでも使えるように鍛えていたからか剣を扱う腕もかなりだ

並の騎士程度であれば遅れを取ることはない


「メイド風情が」

「ほざけ愚図」


刃こぼれしたら剣を拾い戦いを続ける

何人を切ったか分からない、斬られた傷口から血が流れ出す

剣を砕かれ拾おうとしても蹴り飛ばされる


「これで終わりだ!!」


暗殺者が剣を振るう

私は目を瞑る

甲高い金属音が響き来るはずの痛みが来ない

前を見ると見知った少女が目の前に立っていた、逃げたはずのシエラがそこには居た

光の障壁によって攻撃を防いでいる


「馬鹿め戻ってきたか」

「なんで戻ってきた! 逃げろ」


魔法や剣での攻撃を食らい障壁に亀裂が入る


「魔力切れ……」


ガラスが砕ける音が響き剣がシエラを捉える

斬られ血が流れる


「メイドを助けて死ぬか、間抜けらしい最後だ」

「シ……シエラ」


倒れるシエラを私は抱きかかえる

大量に血を流している、もうじき死ぬと分かる


「ア、アカネ」


アカネとはシエラが私に付けた名だ

その名で私を呼ぶ


「止血する」


止血を試みるが血が溢れる

駄目……嫌だ


「ごめんね」

「何を謝る事が……」

「約束守れないみたい……」

「今更そんな事どうでもいい」


涙が流れる

血を止めないと彼女が死ぬ、死んでしまう


「あなたに会えてよかった」

「私もシエラに会えて良かったよ……最後の言葉みたいに言わないで、まだ話したい一緒に居たい」

「私ももっと話したかった」


助ける? この状況から?

周りは敵だらけ、魔力も尽きてる

関係ないどんな手段を使ってでも助ける


「楽しかった、ありがとうね……大好きだよアカネ」

「えっ? 待ってやだお願いだから死なないで」


シエラはそう言い残し意識を失う

身体には力が入っておらず心臓も止まっている

嫌だ、嫌だ、嫌だ、死なないで


「死なないでよシエラ」


骸を抱えて涙を流す


「お前もすぐに送ってやる」


かつての友のように、かつて生き方を教えてくれた人のように、死んだ

何故? どうして? なんで彼女が死なないとならない


「なんで……認めない、認めない」

「死ね」


背中を切られ血が大量に流れる

激痛が来ない……切られ血が流れたのに

ふざけるな、許さない


怒りが激痛も苦しみも飲み込み黒く赤く色付いていく


「なぜ彼女が死なないとならなかった! なぜくだらない理由で大切な人を奪われないといけない! ふざけるな!!」


私は心の底から叫んだ、誰かに言った訳では無いただただ感情の思うがままに叫ぶ

生命力を使い魔法を発動させる

自身を中心に影が森を食らう、ゆっくりと全てを飲み込みながら


「な、なんだこれは!」

「早く奴を殺せ!」


一人が魔法を発動させるが魔法ごと影に飲まれていく


「た、助けて!」

「に、逃げろ!! 飲まれるぞ!」


無情にも暗殺者を次々と飲み込んでいく

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