二年前のある日
「申し訳ない……。このランデルがついていながら、これほどの手傷を受けるとは……。己の未熟を痛感します」
「気にするなよ……。死角から二体同時に襲い掛かってきたんだ。どんなに強い騎士でも後ろに目がついてない限りは防ぎきれやしないさ」
生臭い血の匂いが鼻につく。なんとか敵を倒せたが、かなり返り血を浴びてしまった。血の匂いは肉食の魔物を引き寄せる。今日はもう引き上げた方がいいだろう。
「……ごめんなさい。私が警戒を怠ったから……」
「だから気にするなって。勝てたんだから別にいいだろ」
「でも怪我を……」
「大したことないさ。ちょっと腕を引っ掻かれただけだ」
「でも血が……」
「これは返り血、俺のじゃない」
「……じゃあ見せて。手当てするから」
「いや、いい。早いとこ帰ろう」
「……ルッツ君。小さな傷でも侮ってはいけない。止血と消毒だけでもしておこう」
「……」
「ねえ、お願いルッツ。傷を見せて」
「……はぁ、わかったよ」
左腕の小手を外し、血に染まった袖をまくり上げる。その激痛に思わず顔が歪む。やはり肉が少し抉れてしまっていた。
「やっぱり大怪我じゃない……! すぐに治療するわ」
そう言ってカルナは治癒の魔法を唱える。優しい光が俺の左腕を包み込み、痛みを和らげていく。
「……悪い」
「なんであんたが謝ってんのよ……。悪いのは私なんだから——」
「だからさ、その誰のせいとか誰が悪いとか、そういうの嫌なんだよ。多少の迷惑は許し合うのが仲間だろ?」
「仲間……」
「俺はお前らなら信頼できると思って一緒に旅をしてるんだ。これ以上自分を責めるのはやめろ。いいな?」
「……うん」
「ルッツ君……やはり君は器の大きい男だ。このランデル、今まで以上に精進し君たちを必ず守り抜くことをここに誓おう」
「相変わらず大袈裟だな……。でもまあ、ありがとよ」
やっぱり俺の勘は間違っていなかった。こいつらとなら、きっとどんな場所にだって行ける。大した根拠はないけれど、そう確信することができた。
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