第61話 始まり

3月が終わり4月に入り、年度が変わった。


年度… 年度って何だ?

年は12月から1月のタイミングで変わって、

年度は4月から?

どゆこと?


いや、まあそれはいいや。

4月に入ったということは…


そう、エイプリルフール!

国公認で大手を振って堂々と嘘がつける唯一の日。

さて今年はどんな嘘をついてやろうかな…

って違う!

いや違わないけど、俺が言いたいことは違う!


4月。

それは、多くの人にとって一つの節目となる時。

寒い冬が終わり、日一日と少しずつ気温が上がり、気温の上昇と共に気持ちも上向いて来る。

「お、バイク。」


…目に映る景色も、肌に感じる空気も、やわらかくなってきたように感じる。

とは言え、諏訪湖畔や上川、横河川に植えられた桜が咲くにはまだ少し時が必要だ。

「お、またバイク」


…コホン、

冬の終わりを告げる様な眩しい陽光を浴びた桜の木は、開花の瞬間に向けて目一杯蕾を膨らませる。

そして街ゆく人々も、開花まではあと1週か2週かと、満開の桜並木を待ち望みながら、

刺激的で希望に満ち溢れた新生活への期待感を膨らませる。

ヴォォオオーン!

「お、良い音!」


……そう!季節は春!。

新たな環境。新たな場所。新たな生活。新たな出会い。

心が、体が動き出し、ワクワクドキドキが、何かが始まる予感が―

フォォオオーン!

「お、XJR!マフラー変わってたな、ドコのだろ?」


……


あーもういいや! かっこいい感じで語ろうと思ったけど無理だこれ。

ちょっと暖かくなったからって、すぐ乗り出しちゃって、

バイクで走るにゃまださほど暖かくねぇだろうにまったく!

どこからともなくブンブン湧いて出てきちゃってまあ。

あ〜アイツ絶対新車だな、ジャケットも新品の初心者だわ、ナマイキな。うらやましい。


この時期になると、諏訪のバイク乗り達も一気に動き出す。

諏訪湖畔を離れて塩尻峠に来るまでに、何台ものバイクとすれ違った。

まあ、気持ちは分かるけどさ。

もうちょっと、こう、落ち着いてシーズンイン出来ないもんかね?


「寒っ!やっぱ峠はまだ冷えるなぁ。でもこのステップはイイ感じだ。位置がちょっと上がるだけでこんなに変わるんだなぁ。それに純正と違って、アルミ削り出しちょくのこのカッチリ感もいいわ〜。」


え? なに? お前、もしかしてって?

はい、バイク乗ってますよ。それが何か?


だってそりゃ乗るでしょうよ〜、風は冷てぇけど日差しは暖かいし、バックステップ入れちゃったし、そりゃ乗りたくなるでしょうよ〜。


新生活? 桜が咲く?

そうだな、そんな季節だな。で? それがどうかした?

そんなことより見て俺のバイク!

バックステップ超カッコよくない!?

超カッコいいよね!?

マジ買ってよかったわ〜!!


今年も走るぞお〜!!!












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