第2話 きっかけ

――― 多分一番最初は10代の終わり ケンゴの一言だったと思う

「カツもバイクの免許とらねぇ?」

「バイク? いいよ別に…」

「何でよ? ツーリング行こうぜ」

この時はバイクに何の興味もなかった


――― ある日の夜 確か20時をまわった頃か ケンゴとテルがツーリング帰りに

お土産を持ってきてくれた 瓶入りの海鮮か何かだったかな

丸一日走り回って疲れているはずなのに ツーリングの内容を話す2人の

はじけるような笑顔を覚えている


――― 夏の休日にケンゴに呼び出された 

「バイクに乗らせてやるよ」

ケンゴのアパートに行くと 赤いセパハンのバイクにケンゴとテルが取り付き

キックスターターを蹴り下ろしている

「何やってんの?」

「おうカツ いや エンジン掛かんなくてさ」

2人はすでに汗だくだ

「っかしいなぁ 昨日は普通にかかったのに…」

言いながらも ドフッ ドフッ っとキックを蹴り下ろす

「ガス入ってるよなぁ」「火ぃ飛んでねぇんじゃねえ?」

なけなしの知恵と知識を絞ってあーでもないこーでもないとやっている

2人の顔は笑顔だ


ケンゴとテルは俺の悪友だ

ケンゴは幼馴染で 見た目は完全にヤンキー 中学の時に街を歩いていたら

「お前 どこのもんだ?」と因縁をつけられるほどだ

大雑把な性格で トラブルは大抵ケンゴが持ってくる


テルはケンゴのダチで クレスタにウーハーを積んでズンズンいわせて

現れて以来 気が合って ケンゴ以上の親友と言っても過言ではない

ルパンみたいな体形で マンガ好きゲーム好きイタズラ好きの楽しい奴だ


オレはと言えば どこにでも居るごく普通の全国平均男子だ

これと言って苦手な事もなければ得意な事もない そんな奴だ


「だめだぁ 掛かんねぇ~」

「…よし 押し掛けしよう カツ バイク押してくれ」

「よし じゃねぇよ やだよ」

「カツが一番体力残ってるだろ?」

「しょうがねぇなぁ…」

「おりゃあー」アパート前の道をケンゴと2人でバイクを押す

ケンゴがクラッチを放すといきなりバイクが止まりバイクのテールに激しくぶつかる

いてっ!」

「あれ おかしいな」

「おかしいな じゃねぇよ!痛ってぇ…」

ちなみに一速でやるとこうなる

その後もドタバタと走り回り 汗だくになる頃ようやくエンジンが掛かる

「よし オッケー じゃ乗り方だけど アクセルがこれでクラッチとシフトが…」

この時オレは車のマニュアルは運転出来たがバイクは初めてだった

「オッケー? 絶対にエンストすんなよ?」

「一速入れ アクセルふかして クラッチを…」プスン 「あ…」

「あ じゃねぇよ エンストすんなって言ったろ!」

「しょうがねぇだろ!こっちは初めてなんだよ!」

「はっはっは! やると思った」とテル

オレとケンゴは声をそろえて「次 テルが押し掛けな」

「いや 1人じゃ無理だろ!」

「知らん」

楽しい思い出だ


――― 仲良くしてくれている会社の先輩2人がバイク乗りだと分かる

クスダさんとアマイさんだ それぞれZRXとCBの400に乗っていた

クスダさんは程なくしてGPZ900Rに乗り換えた

この先輩2人からバイクの話を聞いて バイクを見せてもらった

そして とりあえず…とレッドバロンにバイクを見に行った

ずらりと並ぶバイクの中で一台のバイクに目がまった


白いXJR400


この時 オレのバイク免許取得が決まった











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