第2話

「ここが、良いわ」


 家を出るとき、そんな事を考えては、いなかったのですが…。。


 ここが、短かった、二十数年の自分自身の人生を閉じるには、最高の舞台じゃないだろうかと考えてしまいました。

 いちど、そう考えてしまうと、その考えが、頭からはなれなくなりました。


 どこで、買ったのかも思い出せないけど、カバンには、ちょうど頃合いのロープが、入っています。


「カサカサ」


 どこかで、音がなっています。


 虫たちが、もうすぐ手に入るご馳走を期待している音でしょうか。


 たくさんの樹が、私の枝でなら、苦しくないよと、誘ってくれています。


「カサカサ」


 虫たちが、お腹が空いたと、急かしている様です。


「あれにしよう!」


 とても良い枝ぶりの樹が、私を誘ってくれています。


「私を使えば、今の苦しくて、悲しい事が、すべて消えていきますよ」


 美しい枝を持つ樹が私を誘っています。


「ありがとう。お願いしますね」


 私は、ロープを取り出しました。


「これよ、これよ」


 樹が、教えてくれる、枝にロープをかけます。


「カサカサ」


 人の世界では、誰にも望まれなかった私なんかを期待してくれるのだろう。虫たちの音が大きくなってきます。







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