第13話 スキマ
またまた、自宅の近くにあってちょいちょい行く居酒屋での話である。
その日は、カウンター席で隣の席の人と映画「里見八犬伝」の話をしていた。
1983年製作の日本映画で監督・深作欣二、主演・薬師丸ひろ子の名作である。
最近、NHKのSONGSという歌番組で薬師丸ひろ子さんを見たので、懐かしくなって映画を再見したのである。
その話を誰かにしたいと思っていたので、隣の席の人が知り合いで助かった。
丁度頃合いだったのか、私の話が一区切りついたところでその人は席を立った。
そろそろ帰るというので挨拶をして分かれると、その人はレジに行って勘定をしようと財布を出した。
レジはカウンターのすぐ反対側にあるので、私は最後にもう一度軽く挨拶をするために支払いを見届けていた。
札の次に小銭を出そうとしたところで、一枚の硬貨がポロリと落ち、床をコロコロ転がっていって見えなくなった。
その時、私の頭にビビッと電気が走ったような感覚が起こった。
そして、自分も同じようにレジの前で硬貨を落とした時のことが思い出された。
もう大分前のことだが、その時にレジを打っていた店員はサトミちゃんという見知った女の子だった。
私が落としてしまった500円玉を探していると、今ではもう辞めてしまったサトミちゃんは、
「スキマを探して!」
と言ったのだった。
その時、私の頭に再び電気が走った。
サトミちゃんと薬師丸ひろ子は似ている!
そして私は、
「小銭を落として見つからない時はスキマを探せ。」
という生活の知恵をサトミ発見伝と呼ぶことにした。
まぁ、その時は発見したけど取れないという結末だったんだけどね。
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