第8話 カエルぴょこぴょこ
待ち合わせ場所は中央公園だった。
約束の時間は過ぎていた。
待ち人はこないまま、雨が降り始めていた。
聞いてないよ。
だから傘はない。
約束の時間が大分過ぎていた。
待ち人はこないまま、雨が降り続いていた。
雨に濡れたまま溜め息をついて俯くと、足元にカエルがいた。
ちょっと突っついてやれば逃げていくのだろうが、立ち尽くした足は動かなかった。
そこから動けないでいる僕のことなどお構いなしに、やがてカエルはぴょこぴょこと跳ねていった。
みぴょこぴょこだ。
あわせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこだ。
懐かしい早口言葉を思い出した。
約束の時間が更に過ぎた。
僕はフラれたんだ。
あのカエルのようにこの現実から飛び跳ねて逃げ出したい。
けれども、立ち尽くした足は重かった。
一歩一歩、近くの駅へ向かう。
現実へ戻らねばならないから。
目の前が暗くなった。
見上げると街灯が消えていた。
無明だ。
偶然にしては出来すぎだろう。
なにもこんな時にたまたま消えなくてもいいじゃぁないか。
あまりにも無明だ。
むみょうむみょむみょ
みむみょむみょ
あわせてむみょむみょ
むむみょむみょ
無明だと叫びたい思いとは裏腹に、僕の心は早口言葉を呟いた。
難しいじゃないか!
心の中でもう一回言ってみた。
むみょうむみょむみょ
みむみょむみょ
あわせてむみょむみょ
むむみょむみょ
やっぱり難しい。
恋愛のように難しい。
そして、心の中でむみょむみょと呟きながら駅に着いた時、やけに冷静な疑問が浮かんだ。
無明って足せるのだろうか?
その瞬間に微かな希望が湧いた。
一無明ぐらいならいずれ照らすことができるだろう……きっと……
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