第231話 渚ちゃんからのお話

「葵、その、お願いっていうのはね……。」


渚ちゃんがそう、話し始めた。

……俺にも関係する話って言ってたけど、なんなんだろう。


「ゆうきお兄ちゃんが、私のことを思い出してくれるまでは、ゆうきお兄ちゃんのこと、私に貸してほしいの。」


そういえば、今思い出したけど、俺って昔、渚ちゃんと会ったことがあるんだったんだよね。……全く覚えていないけど。


「ゆうくんを、貸す……か~。」


どうやらあおいは、悩んでいるようだった。

『……そんなに俺って信用できないのかな?』

そんな心の声があおいに聞こえてしまったのか、


「い、いや、別にゆうくんを信用していないわけじゃないんだよ?……でも、その、今はもうちょっと、ゆうくんと一緒にたくさんの時間を過ごしたいって言うか。」


ああ、そういう事だったのね。

……確かに、付き合ってからあおいと一緒に過ごす時間って、あまりなかったし。


「……そうだよね。私、葵はきっとそう思っていると思ったんだ。……そこでね、もし、もしも私のお願いを聞いてくれたら、春休み、お父さんがこの前かった別荘を使う権利を、二人に与えようと思うの。」


「……え⁉二人っきりで、別荘⁉」


「そうだよ~。ねえ、あおい、どうする~?……まあ~、夏には、いつもの五人で一緒に行って~近くの海で泳いだりするつもりなんだけど……葵、あれがかわいそうな感じになっちゃってるからね~。……二人っきりで、先に言っておいた方がいいんじゃない?」


「……わかった、そこまで言うなら、ゆうくんと一緒に過ごしていいよ‼」


あおいさん……。切り替えは早くなっても、まだまだですね。

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