第229話 お、お父さん。

「……。」


「……。」


あまりの突然さにびっくりした俺たちは、抱き合う直前の体勢で固まってしまった。


「キャー‼︎ねえねえ祐希、今から葵ちゃんと、何するつもりだったの〜?ねえねえ〜、祐希、教えてよ〜。」


そんな俺たちを見て、母さんはそう言い、


「コホン」


父さんはそんな声(?)を出した。


「祐希、葵ちゃん。大事な話をしようと思うから、座ってくれ。」


……。もうこれ、完全に終わったじゃん。死んだじゃん。絶対これ、

『もう、2人での同棲はやめてもらう。』

って言われちゃうやつじゃん。

はぁ。せっかく葵と付き合えたのに。

そんなことを思いながら、椅子に座る。

前には母さんと父さん、横にはあおい。俺の後ろにあるガラスの窓は、2の姿を映していて……。


「今、祐希と葵ちゃんは何をしようとしていたのかな?」


父さんは俺たちに向かってそう聞く。

……いや、何をしていたのかと聞かれても、答えづらいと言いますか、なんと言いますか。

俺がそんなことを考えていると、


「抱き合おうとしてました。」


……。うん、ちょっと待って?その言い方はやめておいた方がいいんじゃないかな?いや、まあ事実だし、俺もそう表現したけど……なんか『抱き合う』って言葉は、いやらしい感じがする。


「私たち、付き合っているので。」


あおいさんってすごいね。こんなこと、恥ずかしげもなく言えて。

俺なんて、恥ずかしすぎて、何も言えない。


「ほう。2人は付き合っているのか。」


「はい。私たちはお互いに愛し合っています。」


あおいは熱く語る。


「この指輪だって、ゆうくん……祐希さんからプレゼントしてもらったものです。」


……。

あおいがそう言い切った後、少しの無言の時間が訪れた。


「……。葵ちゃんが、葵ちゃんがそこまで言うなら仕方ない。……祐希、お前はもっと男になれ。」


そういうと、父さん達は帰って行った。

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