番外編 もしも渚と付き合っていたら? クリスマスデート編③

「やっほ~」


はぁ、はぁ。500メートル級の山の頂上に着いた瞬間、渚は元気に、市街地に向けてそう叫んだ。……それってやまびこ返ってこないんじゃ。はぁ、はぁ。

もしかしたら今、『500メートル級の山でなんでそんなに疲れてるんだよ?』とか思っている人がいるかもしれないが……500メートルって、結構きついからね⁉富士山の7分の1よ?……あれ、なんかそういうと、そこまできつくない気がしてきた。でもともかく、運動不足の俺にとってはすっごくきついもので、500メートル登るのに、8時間もの時を要した。


「でも、楽しかったな。」


そうつぶやく。

すると、いつの間にか俺の背後に忍び込んでいた渚が、耳元で優しく、甘い声で、


「ゆうきお兄ちゃん、お疲れ様。」


と、そう言ってくれた。渚のその声を聴いた瞬間、俺の疲れはすべて、吹っ飛んだ。布団が吹っ飛ぶように、疲れも吹っ飛んだ。……すいません。すっごく寒いギャグを披露してしまって。……いや、これをギャグではなく、真面目に言ったことにしていれば、謝罪する必要なんてなかったのでは?


「ゆうきお兄ちゃん、今日は私のわがままに付き合ってくれてありがとう。」


そう言って丁寧に渚は頭を下げた。


「いや、わがままだなんて……。」


確かに、最初は驚いたけど、疲れたけれど、それでも、すっごく楽しかった。渚と一緒に同じ目標に頑張れてる感じがして嬉しかった。だから俺は、


「渚、渚のおかげで俺も色々楽しめたよ。ありがとう。」


と、そういうのだった。

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