第213話 渚ちゃんのハロウィン

「ばぁ~‼」


そんな声をあげながら、渚ちゃんが、トイレのドアを開けて飛び出してきた。

……なんでトイレなんかに隠れたの⁉

そうツッコみたいところだが、今はそんなことを考えている場合ではない。だって、だって今までの感じからいくと、俺は渚ちゃんに何かいたずらをされてしまうのだから。運のいいことに、今までのいたずらはどちらも、俺にとっていいものだったが、これまでの俺の経験上、最後までうまくいくことなんてありえない。そう、ありえないのだ。つまりこの最後の砦、渚ちゃんが何かを、何か爆弾を放り込んでくるに違いないのだ。うん。


「ねえねえゆうきお兄ちゃん、びっくりした?びっくりした~?」


……。ごめんなさい。なんかトイレに一人くらいはいそうだなって考えていたので、全くと言っていいほど驚きませんでした。はい。あ、でも、思った以上に渚ちゃんのそのコスプレ……じゃなかった仮装が、すっごくかわいくてびっくりしたけれど。

でもなんか、この様子だと、渚ちゃんはいたずらをしてこなさそうだな。……いや、でもまだ油断はできないぞ‼葵は一言目でお菓子に、優香さんは二言目で言及をしてきた。ということは、渚ちゃんが次、お菓子について言及してくる可能性はあるってことだ。うん。


「うん、まあちょっとはね。」


一応、一応返事はしておかないとね。


「よかった~。びっくりしてくれないんじゃないかと思ってたよ~。それより祐樹お兄ちゃん、お菓子くれなきゃ、いたずらしちゃうよ?」


ほら、やっぱりね。だから言ったじゃん、次が危ないって。はぁ。


「ごめん、渚、今俺お菓子持ってないんだ。」


今までの二回は、ここで誤魔化して失敗した。だから今回は、ここで正直に言ってみよう。そう思って正直に、お菓子を持っていないことを渚ちゃんに言……あれ?俺今、渚ちゃんのこと、呼び捨てにしちゃってない⁉いや、これはまずいよ。うん、さすがに。付き合ってもない女子のことを、呼び捨てで呼んじゃうなんて。俺、もしかしたら嫌われちゃうかも。

そう心配していたのだが……


「……。『渚』?ゆうきお兄ちゃん、今私のこと、名前で、しかも呼び捨てで呼んでくれた⁉う~。う~。う~。」


渚さん⁉なんか消防車(?)みたいになっていますよ⁉


「ゆうきおにいちゃん、どうぞ先に、お進みください。」


……。え⁉俺、いたずらされなくて済むの⁉よかったような、よくなかったような……。なんか変な感じ。

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