第214話 先に進むと、そこには⁉

「うわ~、すっごくおいしそう‼」



リビングに入った瞬間、思わず俺は、そんな声を上げてしまった。なぜこんな声をあげたのか。それは、テーブルの上に、かぼちゃのポタージュ、かぼちゃのグラタンなどなど、カボチャを使った美味しそうな料理が、たくさん並んでいたのだ。……葵と渚ちゃんは料理できないから、これ全部、優香さん1人でほとんど作ったのかな。いや、葵は一部の料理はかなり美味しく作れるようになったから、あおいがかなり手伝ったと言う説も……。

そんなことを考えていると、


「ゆうき先輩、トリックオアトリートです‼︎」


そう言って、机の下から日鞠ちゃんが飛び出してきた。……日鞠ちゃんも来てたんだ。

……いや、さすがに忘れていたわけじゃないよ⁉だって昨日会ってるもん‼ていうか、文化祭って、ハロウィンの前日だったんだね。


「ごめん、日鞠ちゃん。俺、お菓子持ってないんだ。」


さっき成功したこの方法で日鞠ちゃんにも対応する。……あの渚ちゃんに通用したんだから、日鞠ちゃんに通用しないはずがない。うん。多分。


「ゆうき先輩。それなら、残念ですけどお仕置きですね。私だって、わたしだって本当は嫌なんですよ?先輩にいたずらするの。でも、それでもこれがルールなので、仕方ないんです。」


……いや、日鞠ちゃんめっちゃ乗り気でしょ⁉だって今、めっちゃくちゃ笑顔だよ⁉これまでに見たことないくらい笑顔だよ⁉めちゃくちゃ写真に撮りたいという衝動に駆られるくらいかわいい顔をしているよ?


「それじゃあ先輩、目をつぶっていてください。」


あと何その、お約束の『目をつぶっていてください』。今までいたずらをしてきた三人中三人が、全員が、そう言っているけど、何それ、はやっているの⁉いたずら界隈で、はやっちゃってるの⁉

そんな風に、、心の中では抗議しつつも、きちんと目をつぶる。

すると、


「先輩、いっつもお疲れ様です。」


そんなことを言いながら、日鞠ちゃんが『いい子いい子』をしてきた。

……すっごく気持ちがいい。なんかすっごく癒されるし、このまま寝れそうな気さえする。うん。

いい子いい子、マジ最高‼

そんな頭の悪い言葉を叫びそうになってしまうくらいに気持ちが良かった。脳がとろけてしまっていた。


「えへへ~。」


思わずそんな声が出てしまった。……男の子の言葉って、キモイとしか言えないじゃ

ん。うん。


「ねえゆうくん、わたしのキスよりも、日鞠ちゃんに言い子いい子された方がうれしいんだ~。」


日鞠ちゃんのいい子いい子を堪能していると、どこからかそんな声が聞こえてきた。そのとき俺は、その時脳が壊れていた俺は、声の主が葵だということに気づかず、


「うん‼」


と、元気よく言ってしまった。


「ごめん、三人とも。私、ゆうくんとお話があるから、先に三人で食べていて。」


そう言って俺は、目隠しをされたまま、奥の部屋へと連れていかれたのだった。

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