第187話  ……本当に、服を買いに行くんですか?(回想)

「え~、本当に今から、服を選びに行くの~?」


服を選ぶという行為が大っ嫌いなゆうくんは、わたしたち二人が、

『今から三人で、服を選びに行こう‼』

というと、そう言った。

……本とか食材は、楽しそうに選ぶのに、何で服を選ぶのは嫌いなんだろう。

この疑問は、ゆうくんのことを一番理解している存在(自称)である私が、全然理解できない謎だ。……もうこれは、『ゆうくんの七不思議』に、認定してもいいのかもしれない。

そんなバカなことを考えてしまうほどに、理解できないことだった。


「うん。もちろん行くに決まってるじゃん‼高校生にもなって、上の服と下の服を、二つずつしか持ってない人なんていないよ‼……しかも二つとも、運動をするように着るような服だし。」


優しくて、(葵から見ると)勉強もできて、(葵から見ると)運動もできる、完璧な人間であるゆうくんのただ一つの欠点。それが、服に対して無関心なところだと、私は思う。ほとんどの高校生は、かっこいい(可愛い)服を着て、おしゃれして、自分をよく見せようとするものだが、ゆうくんは、

『服なんて、着ることができればいいんだよ‼』

とか言ってみたり、

『おしゃれな服にお金を使うより、動きやすい服にお金を使うべきだろ。服は肌を隠すためにあるもので、別に自分を飾るためにあるんじゃないんだから。大体、人間、評価されるのはない面であるべきで、外見じゃないんだよ。服がかっこいいとかかわいいとか。そんなのどうでもいいんだよ‼』

などと、ひねくれた考えを披露しており、

『服に親を殺されたのかな?』

と、たまに私は思ってしまう。……まあ、『服じゃなくて内面で勝負しようとしているゆうくん、かっこいい‼』

と、たまに思うこともあるけど。

ともかく、そんな考えを持つゆうくんの服を選ぶため、ゆうくんに、服を選ぶ大切さを、かっこいい服を知ってもらうため、もらうため、わたしたちは、ゆうくんと一緒に、服を買いに行くのだった。

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