第186話 ゆうくんの服を選んであげよう‼︎ (回想)

「優香、ゆうくんの服のセンスって、あんまりだと思うの。……だから、二人でゆうくんの私服、選んであげない?」


そういう話になったのは、6月前半のことだった。

たとえ同じ男の人を、ゆうくんを取り合う2人だと言っても、私たちは友達同士。ゆうくんを奪い合う時間以外は、いつも通り、今まで通りに、普通に接している。……まあ、ゆうくんのことが絡んでくると、喧嘩をしかねないような雰囲気にはなるけど。

……それでも私たちは友達同士なので、普通に話はするのだ。そう、この時のように。


「うん。いいよ。私も、好きな人にはカッコいいままでいて欲しいと思うし。それに、なんかそれ、すっごく面白そうだし。……でも、2人で協力して選ぶんじゃなくて、どっちがゆうきくんに、一番似合う服を選べるか、勝負しない?どっちがゆうきくんの良さを引き立たせることができるのか。」


……どっちがゆうくんの良さを、引き立たせることができるのか。

か。そんなふうな言い方をされて、

『え〜、2人で協力して選ぼうよ。』

なんてことを言う私ではない。だって私は、ゆうくんのことを一番理解していると思っているから。

だから私は、


「いいよ。どっちがゆうくんに似合う服を選べるか勝負しよ‼︎……ただ、負けても泣いたりしないでね?」


と、優香に向かっていった。

他人から見れば、『売り言葉に買い言葉』という言葉が似合う状況なのだが、この時の私は、そんなことに気づいていない。…….なぜなら、


いや〜、この言葉、カッコよくない⁉︎

『負けても泣いたりしないでね?』

って言葉‼︎この前、アニメを見ていたときにこの言葉を聞いてから、一度は使ってみたいって思ってたんだよね。

……まさかこんなに早く、使う機会が来るだなんて。

もしかして、私ってすっごく運がいいのかな?


とかなんとか、バカなことを考えていたからです。

はい。……なんで私、自分が攻めている時はすっごく頭が回るのに、優香とか、ゆうくんに攻められると、こんなにバカになっちゃうんだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る