第171話 文化祭の出し物は⁉

「はい。それでは今から、1年4組の、文化祭の出し物を決めたいと思います。」


ちゃんと話を聞いていなかったせいで、文化祭の実行委員になってしまった俺は、やる気のない声でそういう。字が上手ければ、黒板に、クラスメイトが出した案を書くという役割もできたのだが、残念ながら俺は絶望的に字が下手なため、司会をすることになってしまった。


「何か案がある人はいますか~?」


誰も手を挙げなかった場合、

『○○さん何か意見はありますか?』

とか聞くことになってしまうので、誰か手を挙げてくれ‼

そう心の中で願う。

……願ったのだが、誰も手を挙げてくれなかった。

うん。まあそうだよね。なんとなくわかってた。でも何も案が出ないままだと、話し合いが進まない。そう思った俺は、仕方なく


「長谷川君、何か意見はありますか?」


と、大輝に聞いた。……これ大輝に聞いてから気づいたけど、本当は『周りの人と話し合ってください』っていうべきだったんじゃない?ていうかそもそも、大輝にまともな案出せるのかな?


「はい。……執事喫茶がいいと思います‼」


……執事喫茶?そんなの、聞いたことないな。


「えっと、執事喫茶っていうのは、メイド喫茶のメイドを、執事に変えたものです。メイド喫茶は、女の子がメイド服を着て料理を出したりするけど、執事喫茶はその逆で、男の子が、料理を出すんです。……メイド喫茶でもよかったんですけど、料理のできる人が多い女子が裏で料理を作って、男子が注文とったりした方がいいかな?と思ったので、この案を提案しました。」


本気で、執事喫茶というものを、大輝はやりたいのか、真面目な顔でそう語る。……大輝のこんなに真面目な顔、初めて見たかも。


「ほかに何か意見がある人はいますか?」


そう聞いてみたものの、誰も手を挙げる人がいなかったので、


「長谷川君の提案した『執事喫茶』がいいと思う人は、拍手をしてください。」


俺はそう言った。

……すると教室中の人が、一斉に拍手をし始めた。

ただ一人、俺を除いて。

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