第166話 あれ?怒ってないの?葵さん。

午後10時30頃、日鞠ちゃんの家から帰った俺は自分の家の前に立っていた。……怖い。葵がものすごく怒っていそうで怖い。俺が日鞠ちゃんの家から出る直前に帰ってきた大輝からな情報によると、葵は、帰りの会が終わるなり、何も言わずに帰っていった俺の席をものすごい剣幕で睨んでいたようだ。

ただいつまでも家の前に立っているわけにはいかない。そう思った俺は意を決して扉を開けた。


「ただいま。」


俺がそう、小さい声で言いながら家に入ると、

トコトコトコ

と、軽い足取りでリビングから、エプロンをつけた葵が出てきた。

……あれ?葵、もしかして怒ってない?


「おかえり〜、ゆうくん。お風呂にする?ご飯にする?それとも〜、お•し•お•き?」


あ〜、はい。やっぱそうですよね。こんな夜遅くまで、なにも言わずに出かけていて、怒られないはずがないですもんね。

……葵、エプロン姿だけど、もしかしてご飯を作ってくれたのかな?


「……ごめん葵。俺もう夕食、食べてきちゃった。」

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