第145話 ご立腹の葵さん。②

「ゆうくん。ゆうくんは私の彼女なんだよね⁉︎」


古びた扉を開け、曇り空の下に舞台を移した瞬間、葵はそんなことを言ってきた。

……まあ、あんなことされたら怒りますよね。日本には、友達とハグをしたりする文化なんてありませんし。


「うん。俺は葵の彼氏だよ。葵のことが大好きで、葵のことを堺で一番愛している。……。うん。世界で一番。」


なんだよ。堺で一番って。そんなの当たり前じゃん‼︎葵は大阪に行ったことないんだから、堺に葵を愛してる人なんかいないじゃん⁉︎……なんでこんな大事なところで噛んじゃったんだろう。


「渚も、なんで私とゆうくんが付き合っていることを知っているのにあんなことしちゃうの?これじゃあ私、ゆうくんと学校でイチャイチャできなくなっちゃうじゃない⁉︎クラスの公認カップルになれなくなっちゃうじゃん‼︎」


……え?葵さん、そんなポジション狙ってたんですか?俺はてっきり、学校では付き合ってることがバレないように振る舞うのかと思っていました。

……今朝の態度的に。


「うん。たしかに私は葵とゆうくんが付き合っていることを知ってるよ。でも、私もゆうくんが好きだもん‼︎……だから、私は葵に気を使ったりはしない。だって、葵とは親友だけど、この件に関しては、ライバルなんだから。」


渚ちゃんはそう宣言する。

……あの、俺の平和な陰キャライフは、どうなってしまうんでしょうか?

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