第144話 ご立腹の葵さん。①

昼休み、俺と渚ちゃんは、葵に屋上に呼び出されていた。


「なんの話なんだろうね。葵、『大切な話』って言ってたけど。」


……う〜ん。それはきっと、あなたの行動が原因だと思うんですけど。


「それに葵、ちょっと怒ってるぽかったし。……ねえゆうくん、私、何か悪いことした?」


そう言ってくる渚ちゃん。そんな渚ちゃんは、今、俺の手を握っているわけで……。これ、このまま屋上に行ったら、俺は殺されるんだろうな。

頭ではわかっていても、渚ちゃんに、『手を握るの、やめてもらっても良いかな?』なんてこと、俺に言えるはずもなく……。気づいたら、屋上の扉の前に立っていた。この先に、怒った葵があるんだよな。そんなことを考え、ドアを開けずにいると、後ろから、

コンコンコンコン

と、誰かの足音が聞こえてきた。その足音は、どんどん、どんどん大きくなっていき、


「ゆうくん、渚、遅れてごめん。」


そんな声と共に、俺と渚ちゃんの元へとやってきたのだった。


「……。ねえゆうくん。なんで渚と手を繋いでいるのかな?」


先ほどまで、渚ちゃんが手を掴んでいるだけだったのに、いつのまにか、俺と渚ちゃんは、お互いの手を握り合い、お互いの手の体温を、感じ合っていた。

……あれ?なんでこんなことになってんの?

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