第129話 本当は……
おばあちゃんの家に着いた次の日、俺と葵は夜、近くの神社で行われている祭りに出かけることになった。
「楓、楓は葵ちゃんの浴衣の着付けをやってあげてくれ。……ゆうき、ゆうきには話があるから、わしについてきておくれ。」
そう言われた俺はおばあちゃんについていった。
……葵の浴衣、楽しみだな~。
そんなことを考えながら。
「ほれ、ゆうき。お主もここに座れ。」
そう言って、縁側に座ったおばあちゃんは自分の左にある床を手でたたいた。
おばあちゃんに、そう言われた俺は、ゆっくりと、おばあちゃんの隣に座った。
「楓から聞いたぞ。昨日、あの花壇に込めた想いについて、聞いたそうじゃな。」
どうやら、おばあちゃんの話というのは、俺の予想通り、昨日のことのようだ。
「きっと昨日、楓からいろいろ言われたのじゃろう。……昨日までと顔つきが変わっておる。」
日鞠ちゃんの言葉。あれはすべて事実だった。自分を守るため、自分が傷つかないようにするために、勝手に物語を作っていたのだ。でも、でもそれを認めたくはなかった。だって認めたら、自分には何もできないことを、認めてしまう事になるのだから。
「本当は、これ以上何かを言う必要はないのかもしれない。でも、わしもゆうきに伝えたいっ言葉がある。……聞いてくれんかの~?」
でも、昨日の楓お姉ちゃんの言葉を聞いて気付いた。この花壇に、きれいに咲く花に込められた想いを聞いて気付いた。失敗しても、その経験を生かして次につなげればいいことに。間違いを犯したら、ミスをしてしまったら、その経験を次に生かせるように努力し、変化していけばいいことに
……いや、本当はもっと、ずっと前から気づいていた。でも、自分の間違いを認めるのが怖かった。すっごくいやだった。だから、気づいていないふりをし、何もしない自分を正当脚用としていた。でも、でもそれだとダメなんだと、日鞠ちゃんが、楓お姉ちゃんが教えてくれた。そして今度は、おばあちゃんが、手を差し伸べようとしてくれている。間違いを、教えてくれようとしている。だったら俺に、断る理由なんてものはない。
「おばあちゃんの話、聞かせて。」
俺はそう、おばあちゃんに伝えるのだった。
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