第127話 晩御飯
そんな不満を抱きながらも、女子二人に、引きずられながら居間に連れてこられる俺、すっごく情けないな。
「葵さん、楓、ありがとな。ほれゆうき、早くたって配膳の手伝いをしておくれ。」
行動は、まだまだ女子高生のおばあちゃんだが、どうやら話し方までは帰ることができないようで、『~じゃ。』とか、『~しておくれ。』とか年配の方が良く使うような語尾を使っている。
「わかった。……何を手伝えばいい?」
手伝おうと思ったものの、机の上にカレーは並んでおり、特に何か準備をするものがあるようには思えない。……カレーしか、作られてないみたいだし。
「そうじゃな~……すまんゆうき、さっきのはなかったことにしておくれ。いつの間にか準備が終わっていたようじゃ。」
残念ながら、語尾だけでなく、脳も年齢には逆らえないようだ。
数分後、俺たち四人は、
「いただきます。」
そう言ってカレーを食べ始めた。
おばあちゃんの作ったカレーは、俺の作ったカレーのように辛いわけでも、甘いわけでもなかった。コクがあり、野菜の味が引き立てられたそのカレーは、とてもおいしかった。
「このカレー、すっごくおいしいですね‼」
そういう葵の目も、俺の作ったカレーを食べている時より輝いていた。
「……そういえば、葵ちゃんって普段料理は作るの?」
突然(……いや、ご飯の話をしていたわけだし、突然ではないのかな?)、楓お姉ちゃんは、葵にそんなことを聞いた。
俺が料理を教えて以来、葵は週に二回ほどのペースで料理を作ってくれているのだが、正直言って、あまり上達しているとは言えなかった。俺は葵のことを好きだから、食べていられるという部分がある可能性も否定できない。……だって、俺、あの料理を大輝に出されたら、絶対に食べないもん。
「はい。……たまに作るんですけど、あまりうまく作れなくって。」
葵は少しうつむきながらそう答える。きっと、楓お姉ちゃんやおばあちゃんに、料理が得意でないことを知られるのは嫌だったのだろう。(←普通に考えればわかることなのに、『俺、葵のこと知ってますよ』感を出そうとする俺……今考えると恥ずかしい。)
「それなら葵ちゃん、おばあちゃんに料理を教えてもらいなよ‼……実は私も、昔は全然料理ができなかったの。」
そうそう、楓お姉ちゃんったら、電子レンジで卵を温め始めて、電子レンジから火が出かけたこともあったっけ?……あれ?葵もおんなじことをしていたような。
「でもね、おばあちゃんにいろいろと教えてもらったら、学校の友達から、『おいしい‼』って言ってもらえるようなご飯を作れるようになってね。……だから、葵ちゃんも、教えてもらってみたら?きっと、おいしいご飯を作れるようになるよ。」
楓お姉ちゃんにそう言われた葵は、
「あの、おばあさま、わたしにも料理を教えてくれませんでしょうか?」
と、おばあちゃんに言うのだった。
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