第102話 なんかこれって、新鮮だね。

「ゆうきせんぱ~い。朝ですよ~。」


そう、優しい声で起こしてくれたのは、葵でも、優香さんでもなく、日鞠ちゃんだ。

……俺の周りにいる女子って、優しくて、可愛くて……みんなレベル高すぎじゃない⁉俺は、どこにでもいる普通の高校生なのに。


「おはようございます。ゆうき先輩。」


「ああ、おはよう、日鞠ちゃん。」


なんかこう、日鞠ちゃんに『おはよう』って、挨拶をするのは新鮮だな。いっつも、日鞠ちゃんと会うのは、夜の方が多かったし……。


「先輩、『もうそろそろ、朝食ができるので、急いで着替えてリビングの方に来てください。』と、優香先輩が言ってました。……まだ眠いようでしたら、私が、先輩の着替え、手伝ってあげましょうか?」


と、いたずらっぽく笑う。……また、葵に見られたらどうするんだよ。日鞠ちゃんが、からかっているだけということがわかっているから言わないが、1年前の俺なら、絶対にそう聞いていただろう。……だってあの時は、大輝並みに、人の気持ちを察することができなかったから。……やっぱり、『類は友を呼ぶ』ってすごいな。

と、もう何度も言っているため、俺のきめ台詞みたいな感じになっているセリフを言う。(『きめ台詞』というよりかは、『口癖』といった方がいいような。)


「いや、一人で着替えられるから、先行ってて大丈夫だよ。」


これ以上、大好きな人からの信頼を失いたくない俺は、きちんと、そう断わったのだった。

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