第101話 悪いのは、日葵ちゃんだけじゃないといいますか……。
『ゆうくんが、変なことをしないか、私、観察してるからね‼』
とかなんとか言っていた葵や、
『葵、わたしも手伝うよ‼』
とか言っていた優香さんは、布団に入ってから数秒で、もう寝てしまっていた。
『このままだと、日鞠ちゃんと今日は、話せないかな?』
そう思っていたのだが、そんなことはなかったようだ。
「先輩、ちょっとベランダに出て、お話をしませんか?」
優香さんや葵が寝ている寝室では、話ずらいのか、日鞠ちゃんはそう誘ってきた。
夜風に当たりながら、夜空を見ることが好きだった俺は、
「うん、いいよ。」
と、日鞠ちゃんに言った。
「ゆうき先輩、見てください‼星がすっごくきれいですよ‼」
ベランダに出ると、日鞠ちゃんはそんなことを言った。俺たちが住んでいる町は、
どちらかというと、都会と呼ばれる街なのだが、夜は光が少ないため、星がきれいに見える。
「そうだね、月も、すっごくきれいだし。」
明日が満月ということもあり、月はとっても輝いていてきれいで……あの月みたいに、葵の暗い部分を照らしてあげたいな。
思わず、そう思ってしまった。
「え⁉先輩、月がきれいって……。」
そう言う日鞠ちゃんは、顔を赤くしているように見えた。
「い、いえ、何でもないです。……すいません、先輩、全然本題に入らなくて。」
日鞠ちゃんの言う、『月がきれい』の意味が分からず、俺が、けげんな表情をしていたからか、日鞠ちゃんは話を戻した。
「そ、その、今日は本当にすいませんでした。先輩に、こんなに迷惑をかけることになってしまって……。」
日鞠ちゃんは、そう謝ってきた。確かに、原因を作ったのは日鞠ちゃんだ。でも、
「日鞠ちゃんは悪くないよ。これは、断れなかった俺も悪いし……。」
俺にも悪い部分はあるのだ。あの時、しっかり断わっていたのなら、あの時、日鞠ちゃんに、流されずにすんでいたのなら、こういう結果は招かなかった。だから、日鞠ちゃん一人に、責任を押し付けるわけにはいかない。
そう、自分の気持ちを日鞠ちゃんに伝えた。
「先輩……。そんな風に言ってくれて、ありがとうございます。」
そう言って笑うあどけなく、まるで子供のような
日鞠ちゃんの笑顔は、葵の笑顔に負けないくらい綺麗だった。
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