第74話 大輝さん、ちょっとお話があるんですけど。

「よ、よお祐希。それじゃあ俺も、お邪魔しま~す‼」


俺が電柱の前に立つと、大輝はそんなことを言って、家の中に入ろうとした。

……逃がさないよ⁉



数分後、家に入る直前で、俺につかまった大輝と俺は、公園のベンチで座って話をしていた。俺は夕食を、作りかけだということも忘れて。


「なあ大輝、なんでこんなにいきなり来たんだ?前までは、1時間前とかに、連絡をくれてただろう?」


このように、大輝が『夕食を食べさせてくれ‼』というのはこれが初めてではない。

多い時では、月に三回。少なくとも、月に一回はあるイベントなのだ。

……ただ、普段は、俺の家を訪ねてくる一時間ほど前に、連絡をくれるのだが、

今回は、それがなかった。


「実はな、突然、お母さんが入院することになっちゃって……。」


……。そんなことがあっただなんて。きっと、大輝も、日鞠ちゃんも、辛いだろうし、こんなこと、聞かなければよかった。大輝、本当にごめんな。


「っていううそをつこうと思ったんだけどな。日鞠に、『嘘でもそんなこと言わないで‼本当にそうなっちゃったらどうするの⁉しっかり、連絡忘れてごめんなさいって謝ればいいじゃん‼謝れば、ゆうき先輩、きっと許してくれるよ。』って言われてな……。どうしても、どうしても謝りたくなかった俺は、可愛い妹を、世界一可愛い俺の妹を犠牲にしたっていうわけなんだ。」


……。うそだったのかよ⁉

俺、お前の話聞いて、心の中で『ごめん』って謝ってたんだぞ⁉

……さて、これから大輝を、どうしよっかな~。煮ようかな~?それとも焼こう

かな~?

そんなことを考えていた時、夕食を作っていることを俺は思い出した。


「大輝、この話はまた後で‼俺、急いで夕食作らないと‼」


俺がそう言うと、大輝は


「は?お前まだ、夕食出来てないの?……はぁ。これだから祐希は。」


と、言ってきた。

うん。あとでこいつを、みじん切りにしたうえでいためよう。

そう決意する、俺であった。

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