第57話 まさかまさかの来訪者 

ピーンポーン

一通り家事を終え、リビングで休んでいると、突然インターホンが鳴った。

……宅配便かな?

そう思った私は、


「は~い。」


と言いながら、ドアを開けると……


「えっと……葵、おはよう。」


……今は、『おはよう』の時間じゃなくない⁉

……ていうかこれって、かなりまずい、状況なのでは?


「おはよう(?)優香。えっと、今日はなんで、ここに来たの?」


こんなこと、聞かなくてもわかってる。『ゆうくんのお見舞いをするため』

に、来たのだろう。でも、今優香に、この状況について聞かれたら、ぼろを出してしまうと、思った私はそう聞いた。


「その、中島君と、葵が休みだったから。先に学校から近い、中島君の家から行こうかな?って思って。それで、葵はなんでここにいるの?今日学校を、休んでいたのに。」


「え⁉そ、それは、えっと~、その~……。」


まさか優香が来るだなんて思っていた私は、優香の問いに対して、うまく答えられなかった。

あぁ。もうこれは、終わったな。

そう思った時だった。


コンコンコンコン

そんな音を立てて、寝室からゆうくんが出てきた。


「あ⁉中島君‼今日、熱が出たって聞いたけど、大丈夫だった?……その、これお見舞いなんだけど。……よかったら食べて‼」


と、ゆうくんが出てくるなり、優香は玄関に靴を脱ぎ棄てて、ゆうくんのところへ、走って行ってしまった。


「ありがとう。神保さん。それに葵も、今日は一日ありがとう。家事とかいろいろ、

お母さんの代わりにやってくれて。」


あ、ゆうくん、今それを言っちゃ……て、お母さん?

どうやら優香も、同じところに疑問を持ったらしく、


「中島君。お母さんの代わりって何?」


と聞いている。……私がここにいるのは、お母さんの代わりじゃなくて、お嫁さんだからなのに。


「あぁ。実は今日、俺のお母さん、外せない用事があって、俺の看病ができない状態だったんだ。それでその、お母さんの代わりに、葵が一日、面倒を見てくれたってわけ。」


……私、そんなこと知らないんだけど。ていうかゆうくん。なんで嘘ついてるの?

わたしがそんなことを考えていると、ゆうくんは、優香が目を話した瞬間、両手を合わせてごめんのポーズをしていた。

……あ、これって優香をだますための、作戦だったんだ。

そう、ようやく気付いた私であった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る