第25話 ゆうきのことを好きになった日

「お前ら、葵をいじめんなよ‼︎」


ゆうきがそう言ってくれた時、私はすごく、救われた気がした。


「たしかに、たしかに葵はバカかもしれない。でも、でも……」


え⁉︎励ましに来たんじゃないの?

私を助けに来てくれたんじゃないの?

この時、私は明智光秀に、本能寺で襲われた時の

信長の気持ちがわかったような気がした。

……ごめんなさい。嘘です。私、この時『本能寺の変』のことなんて、知りませんでした。


「でも、葵はただバカなんじゃない。バカわいいんだ‼︎バカだけど、優しくて、いつも元気で、可愛くて……一緒にいる俺まで、笑顔になっちゃうんだ‼︎葵は、勉強が苦手かもしれない。でも、そんなことどうでもよくなるくらい、魅力的な人間なの‼︎

だから、葵のことをバカにしないで‼︎俺の、俺の

最高の友達のことを、バカにしないで‼︎」


『バカわいい』って……。きっと、バカと可愛いを合わせたんだろうけど……もっと他に何かなかったの⁉︎

……でも、この時ゆうきにこう言ってもらった私は、すっごく嬉しかった。

ゆうきに、『最高の友達』って、言ってもらえて、

すっごく嬉しかった。

これだけでも、すっごく嬉しいのに、


「お前、そんなに神崎のこと庇うって……まさかお前、神崎のこと、好きなんじゃないの⁉︎」


と、ゆうきを、からかってきた男子に対して、


「もちろん、葵のことは大好きに決まってるだろ‼︎こんな、こんなに優しくて、可愛い女の子なんて、他にいないもん‼︎」


と、言ってくれた。

ゆうきに『大好き』と、言ってもらった私は、

とても嬉しかった。この、『大好き』が、

異性として『大好き』と言う意味ではなくて、

友達に対して抱く感情だと分かっていても、

私は、ゆうきのことを、異性として、好きにならずにいらなかった。

この日、私は中島祐希に、恋をしたのだ。

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