第3話 幼馴染は、甘えん坊?
「……ごめん。葵、こんなことになっちゃって。」
別に、俺が悪いわけではないのだが、女性にとって結婚というのは、なによりも大切なものだと思うので、俺は一応そう謝った。
そんな俺の言葉に対し、俺の幼馴染にして初恋の人、現在お嫁さんになってしまった葵はというと、
「……私こそごめん。こんな可愛げもない女の子と結婚なんて、祐希、いやだよね。それに前、好きな人がいるって言ってたし。本当にごめん。」
などと、すっごく卑屈になってしまっていた。
……もし、こんなふうになってしまった原因が、俺が前に、葵さんに話した『好きな人』にあるのなら、俺は声を大にしてこう言いたい。
『昔僕が言った好きな人って、あなたのことですよ⁉︎』
と、一言。
葵はあんな風に謝っているけど、俺にとってこの状況、天国みたいなものなんですよ。……まあ、葵が俺のことを好きかどうかはわからないし、どちらかと言えば葵は、俺に対して友達のような感情を抱いているだけだと思うから、ある意味地獄でもあるけど……。
「ううん。別に俺は大丈夫だよ。葵と一緒にいると楽しいし。もうこうなったらさ、割り切って結婚生活、楽しもうよ。いつまでも、お葬式みたいなテンションでいてもつまらないし。」
……この状況を『お葬式みたいなテンション』と表現する俺。自分でも、後で振り返ると『お葬式みたいなテンションってなんだよ⁉︎』と、ツッコミたくなる。
……でもまあ、大好きな葵と同棲できるっていう嬉しさと、葵はどうせ、俺のことを友達くらいにしか思ってないんだろうなって言う悲しい気持ちに脳が支配されているこの状況だと、仕方ないよね。そう
言い訳をしていると、
「そうだよね。いつまでも、悩んでいても仕方ないよね。」
先程までの元気のない声とは打って変わった声で、
これぞまさに、元気100倍というような声で葵は話し始めた。
「ゆ〜くん。頭、なでなでして〜。」
……葵さん。いくらなんでも切り替え早すぎませんかね⁉︎いや、本当に。
……ていうか、学校の、
「祐希、うるさいんだけど‼︎調子に乗らないでくれる⁉︎」
みたいなことを言ってくる葵さんはどこにいっちゃったんですか?
……もしかして、今俺の目の前にいる葵さんは、顔も声も似ている別人なのかな?本物の葵じゃないのかな?
そんなことを考えてしまう俺であった。
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