Beautiful Life 〜もう誰も愛さない〜(TVドラマ)

「貴方と私は殺人の共犯者なのよっ!」


 と。過去訪れた幾つかのバイクブームの中でヤマハTWが流行った際に良く耳にした単語「キムタク仕様」

 当時トレンディードラマに興味の無かった私は「Beautiful Life 〜君といた日々〜」をスルーしていました。しかしこの歳になってイチバイクカスタムとして世に確実に爪痕が残っているバイクが出てきたドラマを観てみたい。いや、どちらかと言えばこの目と心に収めておきたい。

 ……と思ってTSUTAYAに行ったんですょ。


 まぁ気がついたら「もう誰も愛さない」全巻借りてましたね。正にジェットコースタームービーの名に恥じない目まぐるしい展開。

 冒頭から殺人事件。

 大規模賭博の冤罪にガンで余命宣告。

 土地や金銭の横領に、出てくる女性皆が主人公愛してる。

 そして有名な台詞。あ、その前に必然性のない叫び。

 これらが全て一話とか二話だけで押し寄せます。それ以降もずっとハラハラドキドキ展開。

 敵味方が入れ替わっていくのも、何だかんだで最後にはみんないい人になってしまうのもこんな昔から今まで変化なしなので、20年後もラノベは異世界メインで安泰だと思います。

 そして一週間で全話視聴して返却時に借りてきました「Beautiful Life」


 やはり一話から死体が出ることもなく、半分(六話)くらいまでぬるい展開です。出会いから距離が近づいていく過程まで、元恋人や元々恋人やライバル含めて主人公は常に悪手悪手で「そうはならんやろ」という局面が多い、いや全部です。

 だけど、だからこそのリアルさはあると思います。実際同じ立場で同じシチュエーションに遭遇したなら男ならそうするでしょう。胸のエンジンにも股間のピストンにも火がつくでしょう。

 アンチ意見としてよく取り沙汰される木村拓哉さんの演技も所謂いわゆるキムタク演技ですが、重要な局面で常盤貴子さんが心理説明を挟んでくださるので、それを踏まえるとキムタク演技に説得力が出てきてストンと心の底に落ちてきます。共演者を引き立てる、まるで有馬かなですね。

 大筋は恋愛なんですが、バックボーンに仕事や夢や障害や闘病がスパイスとして追加されていくので途中で投げ出さなければ、最後まで観て良かったと思える作品でした。素直に泣ける、素泣。

 途中、常盤貴子さんがおもむろに車椅子から立ち上がって「どうだ? リハビリの成果は……」ってどんでん返しが起きてしまわないかとヒヤヒヤはしてしまいますが……。


 随所に出てくるバイクの乗車シーンでは「あれ? これちゃんと顎紐締めてる?」と疑問な描写や、歩道は降りて押さなきゃとか、バイクカバー掛けないと、とか。ちょくちょくありますが、まずは時代ですよね。今だとアニメで免許取得一年以内にタンデムしただけでギャンギャンですが、それも時代。

 そういう部分も含めてですが、見事にスタイルとしてのバイクとの付き合い方の提案が出来ていると感じました。

 バイク乗りがカッコつけようとすると真っ黒になってしまいがちですが、ヘルメットから上着、バイカーシェイド(サングラス)にスニーカーとカジュアルに乗るバイクファッションの可能性が提示されています。

 キムタク仕様のTWがまさにそのお手本で、タンクは鮮やかな水色・グリップが白ゴム・シートも白・ミラーも手を抜かず社外品に変更と、そういったカスタムも今となっては物珍しくないですが当時は斬新でした。ハーレーダビッドソン&マルボロマンのミッキーロークのハーレースタイルくらいの衝撃を受けました。

 ただ、バイク乗りの人が見ると感じてしまう違和感はどうしてもあると思います。トップにアンダーブリッジまで社外品にカスタムしている人の付き合い方やライフスタイルではないんですよね。

 そういった違和感が何なのか? その正体は最後のシーンを観るまで気付かなかったのですが、最後にほんの数分だけ木村拓哉さんがサーフィンから帰ってくる描写があります。その一連の所作だけで、あぁ本物だなと感じるのです。


 バイクも、なんでもそうですが。

 おそらくほんの数行の文章ですら、香るように表現出来るのではないか?

 本物を味わいたいと、観る人・読む人に思わせる作品を創りたいなと。


 毛嫌いせずに観てみると、トレンディードラマもいいものでした。

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