(3)レディウスの道

◇◇◇◇◇◇



森をずっと歩いていたが日が傾いてきた。

「プス。流石にまだ街は見えないか?」

「見えない、まだ遠いからな森を向けるのもまだ半日はかかる」


「そうか、なら一旦この辺りで身を隠せて火を起こしても良さげな場所は?」

「………多分もう少し歩けばあると思う」

「思うってあっそう言やアンタもあの場所から殆ど動いてないから森の道とかは知らないのか?」


俺の言葉に石ころのプスは少し黙る。しかし直ぐに口を開いた。

「精霊は自然の声を聞ける、だから道にも迷わない」


自然の声………またそれはなんぞやってヤツを出してきたな~~。まあ迷わないって言ってんだから信じるしかないだろう。

俺には他にこの森を出られる当てがないしな。


そしてもう少し歩いた所に回りを大きな木で囲われて地肌を晒した空間があった。

「……本当にあったよ、身を隠せて森の中でも火を起こしても問題無さそうな場所」


「フフフのフ~~、プスの言うことは本当、信じないヒラはだからヒラと呼ばれる」


うっわムカつく……けど今回はこの石ころの言うことが正しかったので何も言えないな。

それから俺は燃えそうな木の枝とかをその場所の周りで集めたりした、気がつくと夕方、そして夜が近付いていた………。



パチパチっと枝が弾ける音がする、焚き火の音だ。


夜となり少し冷えてきたので焚き火をしてる、メタルマッチと着火剤の類もリュックサックの中に用意してたので素人でも問題なく焚き火を用意できた。


しかし鍋とかの大きな荷物はリュックサックに入れてなかったのでそこが少しでも深いフライパンに水を入れて沸騰させてからインスタントラーメンとコーヒーにお湯を注ぐ。


後のことを考えると食料も無駄に食えない、空腹を我慢するのも生き残る為には必要なんだろうな。

そんなことを考えてると不意にプスが俺には話し掛けてきた。


「ヒラ、空を見てみろ」

「空?…………!?」

見上げた夜空には星が輝いていた、しかし月がなかった、なにより………。


「何だあれ、天の川?規模も光の強さも俺が知ってるのとは別物だぞ……」

見上げた夜空には途方もなく大きな星の大河が見えた。視界を上から下に向かって流れる光の川だ。


天の川とはまるで違う、何故なら空の流れ星が同じ方向に流れているからだ、まるでその光の帯を束ねる様に見える。

アレはまるで………。


「この世界ではあれをレディウスの道と読んでる」

「レディウスの……道?」

「レディウスはこの世界で生命と再生の神、全ての生き物は死ぬとその魂は肉体から離れて、あの道に乗って遠い世界に行く。

そしていつの日にかまたこの世界に肉体を持つ存在として生まれ変わる。その為の道だからレディウスの道だ」


「あの光の帯がっか……中々にファンタジーな話だな、けどっそう言うの嫌いじゃないね」

「もしかしたらヒラもあの道に乗ってこの世界に来た?」

「ハハハッ!そうか?………そうかもな」


俺のいた世界にあんなのなかったけど……もしかしたら見えていなかっただけであのレディウスの道ってヤツはどんな世界にも繋がっているのかもしれない。


なら、案外俺が異世界に来たのなんてプスの言うとおりなのかも知れないな。少なくとも勇者召喚よりかは俺にお似合いの異世界転移だと思うし。


しかしあんなのを通ってよく五体満足で生きてたよね俺?これが三十路の底力か?。

………いやっ単なる偶然か、もっと言えば。


「生まれて生きてるっては、紛れもない奇跡だって事を。生まれて始めて実感した気がするよ」

「……ん?よく分からない事をヒラが言った」

「悪かったな急に変なことを言ってよ、さっ!そろそろカップラーメンが食える頃だな……」


思わず変なことを口走ってしまった、けどまあ石ころのプスに聞かれてるくらいだし別にいいか。

食べる物を食べたら寝る……あの生命の道ってののお陰かかなり明るい。


そのせいか森で寝るのも何とかなりそうだ。

「フフン。プスは寝なくても平気、だからヒラが寝ている間はプスが番をする」

「………へっそうかい……ありがとう」


どうも明るいだけが理由じゃないらしい。

横になり仰向けになるとまたあの光の帯、レディウスの道とやらが見える。


ここからじゃ見えないが、きっとあの光は山々を越えて、地平線の向こうまで続いているのかも知れないな。どっか高い所に行ったらそんな景色も見てみたくなった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る