二譚 紅切霞亜離茶という人間
紅切霞亜離茶(くれきりがすみありさ)、は孤児であった。
親類も無く、身元も分からず。
此処、マーヴィレー(地名)で寂しい人生を送ってきた。
マーヴィレーは小さな町で、此の大陸の五つの国の一つである、「高楼の国」の中央地に近い地であった。
「高楼の国」の他にも多種多様な国が存在する、唯一帝国制度が残っている「銀雪の国」
、比較的善良な「灼謁の国」、そして鎖国によって閉ざされた「雀鬼の国」極めつけは一切の立ち入りを禁止とされている「雷幻の国」があった。
「高楼の国」は其の国を管理する政府組織の建物が多く、他より犯罪が少ない、そのうえ有数の学園が存在するため大変住みやすい。
此れは此の世界の全学生が習う一般常識だ。
他にも家系について話しておこう。
家系は此の世界で特に、重要視されるものである。
其の家系は多く有り過ぎる余りに凡てを説明することは難しく覚える。
然し紅切霞亜離茶の名前にある「スノーリース」は、有数の名家であり
現「銀雪の国」王家の家系スノーリース、亜離茶はその端くれであり、宛ら名家の捨て犬と云ったところだ。
身元が然としなければ、
悪辣な扱いを受けることは避けられない。
スノーリース家の容姿の特徴として、
白髪に紅蒼の異双眼
極めつけは性別が無いということだ。
性別自体(肉体的な作り)はあれど、それは性器の有無だけの話で在り、姓自認は疎か、特出した体のつくりをすることは無い。
それは帝国制度である国の王が、性別による差別的軽視などで品位を憚られることを避けるためであった。
亜離茶にも姓自認は存在しない。
亜離茶は孤独で在り、それと同時に自身すら解らない迷い羊なのだ。
そんな彼は運良く、優しい四十路程度の女性に拾われ
彼女が大家となって開いているアパァトにて暮らしていた。
彼が齢13にて、物語は動き出す。
此れは彼が学園に入った年の夏のこと。
白骸ボルシェブニック 雨虎 羅芥 @Kirarasetu
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