聖夜十字街
『ラジオ・エンクロッゾ。十字街の皆さま今晩は。外は星すら隠れ、窓には闇が張り付くそんな夜。今宵も眠れぬあなたの為に、私は祈りを捧げましょう。この祈りがあなたの闇を蝋燭一つ分でも照らす事を想って────』
「ったく、なんなんだよこのラジオ番組……」
毎度の挨拶を聞きながら、筆を取る。オレンジ色の電球の真下で俺こと【シマバラ・ジン】はぐしゃぐしゃになった原稿用紙を睨みつけていた。大した才能もないのにひょんな事から連載を持ってしまったのが運のツキだろう。取り立てて文章で食っていきたいと思っていた訳でもなく、ただ金欲しさに選んだ事を今になって後悔している。いや、後悔なら締め切りが来る度にしてるだろうが。
などと、うだうだ考えている内にも時間は経過する。
明日の朝には、厳密には今日の朝には編集者がやって来てしまう。気を取り直して、俺は問題の箇所へと向き直る。
何度書き直したのかも分からない
だが安心して欲しい、冒頭以外は出来ているんだ。誰に言い訳しているのか、俺は頭の中でそう唱えながら文字の一欠片も載っていない原稿用紙を見て思う。
「果たして俺は本当に小説家なのか?」
そもそもその自覚は薄かったが、何時間もかけて一文字も書けないなど文字書きとして失格なんじゃないか?
再度筆を置いて、壁に掛けられた無機質な円形の時計を見る。時刻は午前一時〇七分、正直言って眠くて仕方ない。この際、冒頭など何でもいいんじゃないかとさえ思えて来る。どうせ始まった所が、冒頭になるんだ。
だから、俺の物語があるとするならば、冒頭はきっと、ラジオの挨拶から始まるだろう。
◇
ぴんぽーん。短くベルが鳴って、俺は机の上で目覚めた。小さな窓から射し込む光が、朝を教えている。机に突っ伏していたせいで、頬に跡が付き涎で濡れていた。
起き抜けのぼんやりした頭で状況を整理しつつ、今のベルが編集者のものだと理解する。来るのが早すぎないかと苛立ちつつも、慌てて洗面所へと向かい、顔を洗って玄関の扉を開いた。
「お、おはようございます……」
そーっと扉を開いて相手の反応を窺う。もしブチギレてたりしたら速攻で引き返す為だ。しかし、扉の向こうから返って来たのは全く予想していなかい言葉だった。
「初めましてシマバラさん。へぇ、案外ガタイの良い方なんですね」
「んん?」
声音からして女性の声だった。それは編集者のものではない。そうと分かり、俺は声の主を確かめる為に扉を全開にして、更に疑問が浮かんだ。
「誰だアンタ?」
俺よりも頭二つ分下の辺りで、銀色と黒の少女がこちらを見上げていた。銀色は長く伸ばされた少女の髪の色で、黒は少女の大きく艶やかな瞳の色だ。一目で美しいと分かる容貌をしているが、少女から出ている儚げな雰囲気がなんだか作り物じみていて一瞬ゾっとしてしまった。
俺が固まっていると、少女が扉の淵に手を掛けてずいと扉の内に入ってきた。
「H・N・Pより派遣されて来ました【
「えいちえぬぴー? なんだよそれ」
訳が分からず頭を掻きつつ考える。そして、一つ思い当たる事があった。
「あ!? もしかして風俗じゃないだろうな!? 言っておくが俺は呼んでねぇぞ! 大体そんな暇も金もねぇし、しかもこんなガキを抱く趣味なんて無いし、呼ぶならもっと────!?」
言いかけたところで、俺の視界が暗転した。
次に目を開けると、俺は自室の床で横たわっていた。窓から射す光はさっきよりも強まっていて陽が高くなっているのだと察する。そこで俺は自分が二度寝してタチの悪い夢を見たのだと納得した。
「あーヤバいな俺……相当疲れてる。はやくこんな仕事辞めてぇ」
ぼやきながら洗面所に向かう。寝ている間に事態が解決している事など無い。俺の頬の下敷きになっていた原稿用紙は相変わらず汚れた空白だけがこの後待ち受けているであろう編集者の怒りへと備えよう。
そう思い、仕事部屋からリビングに出た。
「おはようございます。シマバラさん」
「うわぁ!?」
夢で聞いた声が響いてきて俺は飛び上がった。見ると、リビングのテーブルの席に
「どうしましたか?」
何食わぬ顔でこちらを見る少女の様相から察して、俺はこれが現実なのだと呑み込むことにした。ある程度非現実な事にも寛容でなければ作家は務まらないだろうしな。一旦現実として受け入れた俺は留萌の前の席に腰を下ろした。
「夢……じゃないんだよな」
「はぁ」
俺の呟きに留萌はよく分からないといった反応を示した。なんなら俺の方が“おかしい”とでも言いたげですらある。なんにせよ夢かどうかなんてのはこの際どうでもいい。
「アンタは一体なんなんだ? 随分妙な出立ちをしてるが」
一本一本が純銀を思わせる光沢を纏った銀の長髪、ほのかにピンク色を宿す薄い唇、透き通る様な白い肌、黒い瞳は漆黒の真珠に似た確かな輝きを持っており、服装は黒のタートルネックの上に真っ白なコートを羽織り、黒い無地のスカートから黒タイツに覆われた細い脚が伸びている。彼女自体は西洋人形如く整った美しさだが、服装は彼女の在り方を示しているかの様だった。
「最初に述べた様に、私はH・N・Pの職員です。詳しく説明すると長くなり、それは面倒なので省かせていただきます」
一見留萌は少女にしか見えないが、只者ではない雰囲気に俺は気圧される。
「省かせていただきますって……」
ちゃんと説明してくれないとこんなの新手の詐欺か押し入り強盗にしか思えないんだが。かと言って何かを言い返せる様子でも無い。
留萌はそんな俺を看破してか気にした様子もなく言葉を続け、それは俺を更なる混乱へと導く事となった。
「単刀直入に言うと、“悪魔祓い”に協力して欲しいのです」
「はぁ? 悪魔?」
「はい」
留萌は顔色ひとつ変えずに頷く。
「悪魔って、あの悪魔か? ソロモン七十二柱とかグリゴリとかアガリアレプトみたいな奴らの事か?」
「はい」
俺がまさかと思って問いかけた事を留萌に淡々と肯定され絶句した。何がどうして俺がそんな事に携わる流れになったんだ? それに、協力と言うが具体的に何をさせられるのかすら不明な状況で安請け合いはしたくない。俺が躊躇っていると留萌は再度口を開いた。
「安心して下さい。悪魔と言っても、今しがたあなたが口にした様な存在ではなく、我々が悪魔と定義するモノです。それにそう言った真性は専門外ですから」
留萌が言ってる事の大半は理解出来なかったが、口ぶりからしてなんとなく俺にもどうにか出来る様なモノらしいのだと察する。まぁ、そうでなければ困るのだが、どちらにせよ俺に悪魔祓いの経験は無いし悪魔なんてものを見たことすら無いのだから結局そんな事言われても困るのが現状だ。困押し黙る俺の前で、留萌が立ち上がった。
「百聞は一見に如かず。とにかく現場に行ってみましょう」
言って留萌の白くたおやかな指が彼女の顔の前に持ち上げられる。そして、一度パチンとその指が鳴らされると、俺の視界は二度目の暗転現象に見舞われた。
◇
視界が明転し、気付くとそこはどこかの街中だった。しかし石造りの建造物が連なっているのと、空気の匂いが元いた場所との違いを体に教えていた。
一瞬で異なる場所に移動するなんてのは“魔法”じゃないか。などといちいち驚いていたらキリが無いと思っていると、隣から留萌の声が飛んできた。
「『物心がつく』という言葉がありますよね。それって具体的にどのくらいの時期なのでしょうか?」
……なんなんだ急に。突拍子もない質問に一瞬眉を歪めてしまったが、何か意味があるのかと思い考えてみる事にした。
大抵、色々な事が分かる様になり物の名前や人を認識し始める時期としては二歳か三歳くらいだろう。そこから漸く人間らしくなり、喜びや悲しみを知る様になっていき、俺の様な憐れな男になるヤツもいれば、大企業の社長になるヤツもいる。
……なんだか考えてるだけでも悲しくなってくるな。
俺が勝手に精神的ダメージを受けていると、留萌が「あちらを」と言って正面を指差した。
「なんだ?」
留萌の示す先は暗闇が広がっていて、そこには街灯の一つも立っていない。見上げれば空は星ひとつの輝きすら纏っておらず、同様に月も姿を隠していた。
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その時、留萌が大きな黒い瞳を瞬かせた。何やら驚いている様子だったが、俺には何一つ留萌の感じたであろうナニカの情報が伝わってこない。
「どうした?」
固まっている留萌に問い掛けると、彼女は小さく息を吐いて平静を取り戻す仕草をして「なんでもありません」と返してきた。
「なんだってんだ……?」
俺は再度留萌の指した方を見るが、そこには暗闇があるだけで他には何も存在していない。一体何を見せようとしたのか、はたまたただ俺をからかっていただけなのか。
気付くと、留萌は俺を置いて歩き出していた。向かう先はどうやら街の中心の方らしい。俺もその後を追った。
そうして着いたのは、大きな広場だった。中世の様な雰囲気が残る石造りの噴水と広場を囲む様に大きな建物が並んでいる。深夜だからか、どれも活動している様子はなく、明かりが消され静かに佇んでいるだけだった。
作家としては興味深い景色だが、留萌にはそうした好奇の色は無く感情の感じられない瞳で前だけを見ている。
しばらく無言が続き、耐えかねて俺は留萌に話しかけた。
「あのさ、さっきの話の続きだけどアンタ はどう思うんだ?」
「“物心がつく”とは要するに自己の知覚だと私は考えます。この世に生を受け、世界に触れる事で己の形を知る。厄介なのは我々人間の一生はシステム化されていない、人を、場所を、思想を、凡ゆるモノを選り好み世界の形を歪めてしまうのです」
「世界を歪める……もしかしてそれがアンタの言う“悪魔”なのか?」
留萌はこちらに目線だけ動かして「その通り」と答える。どうやら正解らしいが、留萌の言う悪魔とは俺の感性からしたら普通の人間にしか思えない。人間は近い感性を持った人同士で家族や友人と言ったコミュニティを形成し、時に妥協し、時に衝突し、時に排斥を行う。誰だってあるがままにはいられない
事を理解してる人間が殆どだ、留萌がそれを悪魔と呼ぶならこの世界は既に悪魔で満ちている。
「アンタは俺に悪魔祓いを手伝えと言ったが、俺自身もその悪魔に当て嵌まると思うんだが」
「少し言葉に誤りがありました。厳密に悪魔とは大いなる存在と対立する者たちの事を指します。とはいえ、この世に無辜の人々がいなくなり久しいのは同意します」
落胆する様な口ぶりで留萌は続ける。何か引っかかる言い方に俺は少し苛立ちを覚えた。
「ついでに言うと我々の定義に当てはまる悪魔のほぼ全ては我々の手で祓われています」
「うん? どう言う事だ?」
実感の薄い俺でさえ多少驚く。留萌の言葉の真贋は不明だが、これまでの口ぶりからして彼女が真面目に語っているのだけは分かる。
「今日が何日か分かりますか?」
言われて俺は自分のデジタル腕時計を確認する。時刻は夜二十三時十五分。日付は十二月二十四日となっていた。今になって俺は今日がクリスマスイブだと知った。だからなんだという話なのだが。俺は説明を求めるように留萌に視線を送った。
「明日はクリスマスです。多くの人々が浮かれ、祈り、世界が少しだけ平和になる日でしょう。ですが、同時に世界にとって最も危うい日でもあるのです」
「それはどうしてなんだ?」
「では少し長い話をします。よろしいですか?」
「正直、アンタの話についていけてないからなるべくなら手短めに頼みたいんだけど」
留萌は腕を組んで少し考える仕草をして、首肯してくれた。
「近代化以前、世界にはまだ“魔法”が存在し見えぬモノにも力がある時代でした。理解せずとも人々は魔法が使う事が出来、人と神秘が強く結びついていました」
留萌はそう語るが、その時代の生まれでは無い俺にはやはり実感が薄い。
「日本には古来より神秘との繋がりが重要視されています。卑弥呼や平安時代の陰陽道などが存在し、人のみならず国すらも動かしていた」
「まぁ、卑弥呼は教科書にも載ってるくらいだしな。で、結局その話とクリスマスが危険ってのはどう繋がるんだ?」
「今からその話をするつもりだったのですが」
「う、すまん」
「まぁいいです。事は単純、近代化が進み科学技術の発展した現代では神秘は力を失いました。ですが、クリスマスの日だけは話が違うのです」
「クリスマスを僻む悪魔でも出てくるのか?」
「違います」
なんだ違うのか。
留萌は静かに言葉を続けた。
「世界に神秘の力が戻るのです」
「と、言うと人間はその日だけ魔法が使えたり見えないものが見える様になるのか?」
「惜しいですが違います」
これも違うのか。けど惜しいのか。
「正解はこの日だけ魔法が使えた頃の世界に戻るのです。
「……それってどう違うんだ?」
「失われたモノは失われたままであるのがよいのです。失ったのなら取り戻すべきでは無いのだと、分かりませんか?」
「うーん、使えるなら使えた方がいいんじゃないか? 俺も魔法には興味がある」
「────やはり、歪んでおられますね」
留萌の目がぎょろりと動いて俺を見た。これまでは人形の静謐を保っていた彼女の纏う空気が殺戮機械じみた冷徹さへと一変する。
そこで俺は観念する事にした。
「つまらねぇな」
眼前の少女を睨み、俺は右手を鳴らす。すっかり慣れた動作だが本質の方はまだ馴染んでいない。完全に慣らすにはいま少し時間がいるだろう。だが、このガキがそれを待つ訳がない。だからこそ俺の前に現れたんだろうが。
「魔法、多少は使えるようになっているようですね。道理で事象の上書きが出来ないわけですか」
「あー[削除済み]にしたアレか。中身は知らんが、仲間でも呼ぼうとしたか?」
留萌の眉根が僅かに動いた。図星か。
「まぁいい。ここに入ってきたって事は俺の力も多少分かってるんだろ?」
「ええ、極めて普遍的な現実改変の能力。魔術においては究極ですが、現代で言う魔法とは総じて現実改変ですから。つまりは──凡庸、というわけです」
「凡庸、だと?」
この現実を好きに書き換える力が?
俺の思い通りになる世界を作る力が?
凡庸?
怒りを通り越して笑いが込み上げてくる。このガキは自分が何と対峙しているのかまだ理解出来ていないようだ。
「神を前にして大層な事を言ってのけるとはなぁ!」
俺の叫びに応じて景色が一変する。
周囲の石造りの街が崩壊し、足元に闇が広がる。空に巨大な月が浮かび上がると俺を照らし出して威圧感を演出する。
これだけの力を見せつければ余裕ぶったこのガキも怯えて震え上がるに違いない。無様に怯える留萌を見ようと眼下に目を向けて、俺は自らに起こる苛立ちを募らせた。
「貴様……なんだその余裕は!」
「貴方こそ何をそんなに怯えているのです?」
「怯える? 俺が? 馬鹿な事を言うな! 俺には現実を変える力がある! 恐れる者など何も無い! もういい……お前も俺の世界から消え去ってやる!」
留萌に手のひらを向けて俺は力を行使しようとする。本来であればこの様な動作は必要ない。思うだけで“そうなる”、そのはずなのに……留萌はまだそこに立っていた。
「何故だ!! どうしてお前は消えない!!」
「分かりませんか?」
留萌が静かに問いかけてくる。その態度が何より俺の苛立ちを刺激した。
「答える気がないのなら殺すだけだ。お前は言ったな? この日だけは魔法が使える世界に戻ると、ならば俺もまたより強い力が手に入るという事だ! 消すのが無理なら免れようのない死を演出するまでだ」
俺は月に手を向ける。これは最終手段だ。俺の作り上げたモノを破壊してしまう過剰な演出だが、この際どうでもいい。世界は俺の手でいかようにも出来る。
「さぁ月よ、落ちるがいい──!」
怒号と共に月が動き出す、直下では留萌がそれを見上げている。月が落ちてくるとならば、流石に何も出来ないようだな。
「ありきたり。やはり、凡庸」
「はっ──?」
留萌の言葉に耳を疑った。直後、俺の世界は壊れた。
「おい──なんだよこれは……やめろよ、俺の世界を壊すんじゃねぇよ、ふざけるなよ……」
見慣れた天井、シミだらけのカーペット、散乱した酒の空き缶。こんなのは俺の現実じゃない。俺の現実はもっと────
脳が理解を拒み、視界が揺れる。ふらつきながら一刻も早く“現実”に戻ろうと無意識に後ずさっていた。
その時、ぴんぽんという音が耳朶を打った。
「はっ、はっ……!」
玄関のチャイムが鳴らされた音だ。なんでこのタイミングで。いや分かる。多分あのガキだ。俺の世界を壊した張本人のガキが、あの扉の向こうにいる。
「くそくそくそくそ……!」
焦る。頭を掻きむしる手が止まらない。なぜ、どうしてアイツは俺の思い通りにならない?
「っ……そうかっ、違和感……!」
思えば最初から思い通りにならない事があった。あの変なラジオ、アレだ。アレが始まりだったんだ。
「クソがッッ!!」
怒りに任せて壁を何度も殴った。その間もチャイムの音は鳴り止まない。段々と何もかもが俺の思い通りにならなくなってきているのが分かった。
何か手は無いかと思い、ばっと部屋を見渡した。その時だった。がちゃりと玄関の扉が開かれた。
「月を落とされるより、部屋に閉じこもられる方が遥かに面倒なんです。知ってますか?」
少女は呆れた様に言いながら俺の部屋へと足を踏み入れてきた。
「あぁ、もう俺に質問するなァ!!」
留萌が問いかけてくる度、侵食されていく感覚が強くなってくる。頭がおかしくなりそうだった。
「どうして?」
「それを、やめろって言うんだよォ!!」
汗が止まらない。なにか凄まじく巨大なモノと対峙している気がして恐怖はどんどんと増してくる。
そして限界を迎えた俺はまだ俺の思い通りになる事がある事に気付き、笑みが零れた。
「魔法使いの最後はいつもそれですね」
つまらなそうに留萌が言うのが聞こえた。俺はざまぁみろと思いつつ、暗闇へと身を委ねる。始まりがあるのであれば、終わりもあるのが物語だ。薄れゆく意識の中、俺の耳にあのラジオが聴こえてきた。
『ラジオ・エンクロッゾ。十字街の皆さま今晩は。外は星すら隠れ、窓には闇が張り付くそんな夜。今宵も眠れぬあなたの為に、私は祈りを捧げましょう。この祈りがあなたの闇を蝋燭一つ分でも照らす事を想って────』
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