十四話 友達

 あの時から一週間たち今アリサさんの家にいる。

 連絡をしたところ『来週はどうですか?』と返信が来たため現在に至る。

 家にいる理由は今回何をするかという話になり、アリサさんのほうから『私の家に来ませんかと?』言われたからだ。

 何をするのかドキドキみたいな少女漫画みたいな気持ちはなく、なんというのだろう、友達の家に来る感覚?というものなのだろうか、春と出会うまでは友達関係なんて清算してしまっていたからわからなくなってしまっているがそんなものだと思う。

 ちなみに今の僕は一人だ。

 アリサさんが「冷蔵庫の中身が空でした」と家に着いた途端に言ってきてそのまま街のほうへ走って行ってしまったからだ。

 一人なのはいいが何もしないというのは意外と暇なものである。

 一か月前の自分なら何もなくても寝ていれば問題なかったが、最近は暇があれば出歩いていたりしたので暇になってしまう。

 またこういう機会があるかもしれないからこれからは本の一冊でも持ち歩く癖でもつけようかな。

 僕がそんな感じで悶々と考え事をしていること30分ほど、玄関のドアが開かれる音がする。

 やっと帰ってきたと、ため息が出てしまう。

 玄関から慌てて入ってきたアリサさんはその調子で冷蔵庫や諸々に買ってきたもの収納している。

 時計を見ると、ちょうど12時を回り昼になっていた。

 まだ腹の虫はならない。

 この調子だと腹の虫が鳴るのは2時間程度たったころだろう。

 忙しく買ってきたものを片付けてきたであろう、髪にほこりや汚れをのせてきたアリサさんがこちらに来る。

「すいません、慌ただしくしてしまって」

「いいですよ、そういうのは意外と慣れてますので」

「そうですか、ありがとうございます」

 慣れたのは春のせいというか、おかげなのか...。

「そういえば、今日お呼びしたのはお話したいことがあって」

「あ、そういうことですか。話というのは?」

「仕事の同僚や上司に言われたことで、友達ができたらそいつと腹割って話せというアドバイスを受けまして、今日はそれに付き合っていただけるかなぁと」

 友達と思ってくれていたのか、それに少し驚きを覚え、同時に嬉しさだろうかそんな温かいものも浮かんでくる。

「もしかしてそういうのはお嫌いでしたか?」

「いいえ、大丈夫です。いいですねそういうの、僕も話せることは話していこうと思います」

「本当ですか!?ありがとうございます」

「せっかく腹割って話すんです、口調も崩しますね」

「はい、わかりました。というかこれが地なんです」

「そうですか?なら僕もこっちで」

「いいえ大丈夫です。そちらは崩してください」

「わかり...わかった。じゃあこっちでいくよ」

「ありがとうございます、では私からいきますね。最初は何から...孤児院時代から別の施設に移って少し、というところまで行きましょうか」

「意外とハードそうな話ですね」

 額から汗が出そうな話だな。

「そうですか?最初から語るつもりだったのですが...。お掃除屋時代からいきますか?」

「いや、最初からいきましょう」

 こうして、僕とアリサさんの長い昔話の語り合いが始まった。

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