十三話 また会いましょうね
約束の日、僕は待ち合わせ場所に指定時間の10分前にいた。
こちらから誘ったのだから先についていないといけない、そう思って行動したのだがアリサさんは既にいた。
指定時間より早くついているのに相手のほうを待たせてしまったというこの感覚、なんだか苦い感じだ。
ちなみにまだ声をかけれていないない。
気まずいからだどうすればいいか思い悩んでいるうちに5分が経過していた。
これでは僕が遅刻みたいになってしまう。
焦っている思考の中、足を一歩また一歩と進めることにした。
守っているのに破っている感覚、これは二度と忘れられない感覚になりそうだ。
「おはようございますアリサさん。早いですね。誘った僕のほうが遅れちゃったみたいになってすいません」
できるだけ外面からは気づかれないように気を付けながらアリサさんに声をかける。
「おはようございます山崎さん。本日はお誘いありがとうございます」
「そんなにかしこまらなくていいです。あと僕のことは気軽に優でいいですよ」
「そうですか、わかりました。それでは優さん今日はよろしくお願いします」
「はい、ではいきましょうか」
何とか会話をつなぎショッピングモールへと足を運ぶ・
そう言えば、先ほど気軽にと言ったのだがアリサさんの丁寧口調はそのままだったな、あの口調が素なのだろうか。
今日の予定を振り返る。
先日アリサさんにはこのようにメッセージを送った。
『こんばんわ、アリサさん。夜にすいません。お詫びの件ですが、その日の予定は朝の11時に駅前の広場で落ちあい、その後ショッピングモールで買い物と昼食という感じでどうでしょうか?』
このことについては了承してもらい、今に至っている。
あとは、お詫びをどうするかだ。
何を送ればいい変わらないからこうやって会っているのだが、今回で見つけれなければまた呼んで一緒に街を歩かせることになりかねないので今回でなんとか見つけたいものだ。
そんな僕の不安はさておきアリサさんは結構楽しそうにしていると思う。
店が一つ一つかわるがわるに目を輝かせながら店を物色している。
このままいけばここにある店を制覇しそうだな...。
僕自身はそこまで苦ではない。
閉店時刻まで付き合えそうだな。
そこまで時間がかかるかはわからないが。
「見てください優さん面白そうな...これどうやって使うんですか?」
こうやって僕にも話を振ってくれる。
結構距離感も近くなってると思う。
春とは違うタイプだが、近い人には結構心が開けるタイプなのか?
いや、関わりだして数日しかたってない僕が言っても説得力はないか。
そんなことは考えてないでアリサさんのお詫びのことを考えよう。
13時が回ると腹の虫が鳴る。
アリサさんはその音が聞こえたのか「昼食にしますか?」と尋ねてくる。
「そうですね、お昼にしましょうか」
そう言って、マップの書かれている場所に向かい、どこへ行くかを決める。
僕はあまり食へのこだわりがないのでアリサさんに決定権を渡したのだが、アリサさんもこだわりがなく、人の少ない店で600円程度のもので腹を満たした。
連れ出したのは僕なので支払いは僕がした、めちゃくちゃ自分が払いますと言われたけど。
食後はベンチで30分ほど休憩し、再び足を動かし始めた。
1時間ほど足を動かしているとアリサさんがとても気になる視線を送っているものがあった。
「優さん、アレ可愛いですねどうやって買うんですか?」
視線の先にあったのはクレーンゲームだった。
「あれはクレーンゲームですね。あのアームを使って景品を穴に落としたら自分のものになります。
「ほぉ...」
今まで見せたことのない食いつきを見せるアリサさん。
クレーンゲームが物珍しいのか、景品が可愛いのかわからないがお詫びはアレにしよう。
「アリサさん何が欲しいですか?」
「えっ?いいんですか?じゃ猫をお願いします」
「はい、わかりました」
僕はそのクレーンゲームの前に立つととりあえず500円玉を入れる。
一回じゃとれないことはわかりきっているからだ。
とりあえず6プレイ分あるので適当に操作してアームの強度などがどのようなものか見る。
最初の2プレイぐらいでわかった。
そこまで弱くはないが、調整しないとすぐ落ちる仕組みか...。
景品を3プレイで引っかけるようにして少しずつ穴に近づける。
最後の一プレイで持ち上げる。
ここでうまくいけば取れるのだが...と期待しつつ眺めていると普通に成功していた。
よしっと思って軽くガッツポーズをしてしまう。
取り出し口から景品を取り出してアリサさんに渡す。
「はい、アリサさん」
「あ、ありがとうございます。大切にしますね!」
その時のアリサさんの表情は今日一番に輝いていた。
その後、3時間ほど店内を回り、アリサさんを家まで送った。
別れ際に「また会いましょうね」と言ってもらえた。
また何かしらに誘ってみるのもいいかもしれない。
次の邂逅を果たすのはこの日からちょうど一週間後のことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます