五話 春との休日Ⅰ
昨日のメッセージどうりに昨日別れた場所で春を待つ。
昨日の言葉に釣られているからだろうか、自分の死を連想しない。
思いつく隙が与えられないの間違いだろうか。
執着という言葉が頭の中をグルグルする。
考えれば考えるほど渦の中へと沈んでいくかのように。
いつも道理に思考停止をしたいが、それが上手くいかない、僕のコレは本当に執着なのだろうか。
いや、それは否だ。
こういう存在なのだ、相手の言葉に気を取られてはいけない。
思考しているうちに少し離れたところから「ゆうく~ん」と声が聞こえてくる。
来たかと思うと考えるのが自然と停止する。
何かが僕の渦巻いているものに勝利したのだろう。
「やぁ、はる」
「おはよう、優君」
おはようか...いつだろうか自分から挨拶をして返されたのは。
こういう日常もいいなと思えればいいのだが、そういう気持ちは湧かないらしい。
そんな自分に安堵する。
春の言ったことを否定できる要素があったという事実に。
「そろそろ、学園行こうか?」
「ああ」
春に言われて連れるように後ろを歩いて学園へ向かう。
一歩二歩と進むこと数分で春が「何で一緒に登校するのに隣を歩かないの!」と言って自分から僕の隣に来た。
少しため息をついたりもしたが二人で一緒に学園の門をくぐった。
学園の下駄箱前につくと手島が、落ち込んでいることが一目でわかる顔をして僕たちを、いや春を待ち構えていた。
「やぁ手島君、昨日の件どうしたの?」
「あぁ、そのことに礼を言おうと思って...な」
手島がこの姿勢ということは昨日の話は本当のことだったらしい。
正直証拠などから信じてはいたがそれでも、わからないというのは疑問を作る。
答えがわからない、何かしらのテストでも確信をもって答えたとしても正当というのがわからない以上人間不安になるのだ。
「よかったよ。彼がしたことは許されないことがからね。警察にでも突き出したの?」
「ああ、そうだなアイツの親も絡んでたらしくいろいろひっくるめて一家総出で警察送り、妹に関しては死んではいなかったがこの歳で..この歳...でなもう子供が生めなくなっていたよ。俺がちゃんと、俺がちゃんとアイツのことを理解していればこんなことには」
手島の悲壮感は始めよりいっそう強くなる。
少しづつだが涙も出てきている。
きっと家族という縁がしっかり結ばれている証拠だろう。
正直僕は家族がそういう目に遭ってもきっと何とも思えないだろうから、それはとてもいいことなんだろうなと思う。
手島が涙を流しながら膝を崩す、すると春は手島の頭に手をのばし優しく声をかける。
「いいんだよ。もう.辛いと思わなくていいんだ。辛さに飲まれたら人はその中を永遠とさまようことになる。だからね次はどうするか、何をしたらこんなことが起きないのかを考えよう。君は友達だった田中くんをちゃんと疑い事実を聞き出したし制裁を与えることができた。もし、うまく考えられない、漠然としか考えられないというのなら私が力になるよ」
そう言って手島にのせていた手の手のひらを手島の視線上に置く。
「さぁ、手を握ってこれから君は正しい人間だ。間違いを起こさない限り君は正しい人間という自信を持つことができる。ね?」
「ああ、ああ!」
まるで何年も仲良くしてきた親友かのように、喜びが周りに浸透するほどの気配が感じ取れる。
その手は信頼、信用、希望が溢れていた。
僕には眩しすぎるし信じたくもない世界のものだが、たまにはこういうのも見るのは悪くない、そう思った。
手島が立ち去ると春は僕のところへ寄ってくる。
「ねぇ、私かっこよかった?正義だった?」
「周りの人間からしたらそうなんじゃないか?好印象に映ってた思うぞ」
「そうかそうか。うんうん。...予定を早めてもいいかもね」
「予定?なんかあるのか」
「いやなんでもない、こっちの話だよ。じゃ教室いこっか」
「ああ、そうだな」
その時、春が言った予定というものは気になりはしたが、別に探るほどの事でもないと僕は切り捨てた。
教室につくと春からメッセージが来た。
『今日も屋上集合!』
『わかった』と返信しておいて僕は授業に励む。
昼休みが来るのを待つように。
昼休みになると僕はいつもより速足で屋上へと向かう。
前回は用事があってあんな時間に来たが今回はそういうことは起きないだろうと思い先につけるようにと少し急ぐ。
ちなみに先につきたいのは、遅くついたときの罪悪感に囚われて死にたくなるからだ。
屋上につくと誰もいなかった。
間に合ったと安堵しいつものていいちへ座る。
座ると同時に屋上の戸が開く。
「どうだ、早く来たぞ。まだ優君は来てないだろ!」
「よっ」
僕は興奮気味に到着した春にパンを齧りながら声をかけた。
その時の春の顔はとても残念そうだった。
「はい、残念ながら遅くつきました私ですが今日は誘いたいことがあり、お呼びしましたぁ」
残念なのがわかるくらいの声の落とし方で僕に語り掛けてくる。
これが乙女心とかいうやつなのだろうか?正直僕には我儘にしか見えない。
「それで何すればいいの?」
「それはですね私とデートしませんか?」
「ああ、わかった」
「え?反応薄くない?」
「別に恋人みたいなデート求めてるんじゃなくてただの付き添いだろ?わかりきってるのに驚く必要はないだろ」
「優君って実は感がいい?いや、執着が薄れている時はいろいろ落ち着いてるのか...まぁとりあえず大丈夫?あっ日曜日ね」
「問題ないぞ」
「おっけ、あとで集合場所とか送っとくね」
「了解した」
とんとん拍子で決まってしまったが、まぁただの付き添いのデートだ。
いつも道理のペースで問題ないだろう。
デートに対して、何故だろうか、楽しみや、緊張は全く浮かばず、ただひたすらに不安しか出てこない。
これが勘違いなのか考えすぎなのか、答えは日曜日に出るだろう。
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