1章 夢見る少女

一話 何も得られない日常

「まだ、生きることをやめたいと思ってるの?」

「そうですね」

「あのね、生きることはね素晴らしい事なのよ?あなたのお父さんお母さんの間に何億という確率から生まれたのが貴方なの、そのことを大事にして生きていこうとか思えないの?」

「はい、何も感じません。なんなら何億の確率~とかいうくだりそろそろほんとにやめてもらえませんかね?正直僕としては親に押し付けられた生存権程度にしか感じられません。返還できるものなら変換してやりたいですよ」

「そう...変わらないのね」

 今日も、うざいほどに白い天井、壁、廊下、人間が広がる病院で変わりもしない気持ちを変えようとするカウンセラーという名の害獣と会話をする。

 いつもくだらない生きることの大切さやら、奇跡やらをあたかもそう感じているのが当然だとの如く語ってくるが、そろそろネタ切れなのだろうか?最近は同じことを毎日まいじつ言ってくるようになってきた。

「あの、もう帰ってもいいですか?どうせなにも変わらないんでしょう?こんなのしたってただの意見の押し付け合いみたいじゃないですか?親が無理やり入れたものですし僕の意見を尊重されたものでもありません。生きる希望を求めているならまだしもそんなもの僕は得られないし手に入りませんよ」

「あのね?そんなこと言わなくてもいいと思うの、ね?親御さんも心配してこうやってあなたをここへ通わせてるんだしあなたもその意見をくみとるというかね?尊重してあげるのもいいと...」

「あの、もう来ないです。こうなったのは親の教育の結果です。あなた方がどう思うかで僕の生き方にケチをつけないでください。ではさようなら」

「あっま...」

 うざったくなったカウンセリングを一時間で契約しているところを30分ほどで無理やり終わらせて白い世界を後にする。

 あのカウンセラーは少し後まで声をかけながら追いかけてきたが、完全に無視をした。

 その意思が伝わったのかあとカウンセラーは途中で追いかけるのも声をかけるのもやめ足音が元居た場所に戻っていた。

 こうなったのはいつだっただろうか?最近ではまともな会話すら危うい。

 学園の友達と話していたら空気は壊すし、教師からは白い目で見られている。

 きっと僕が精神的に弱かったのだろう、というのはよく考える。

 教師に成績や卒業をたてに脅迫されるのは普通だろうし、話したこともないやつに陰口を叩かれたり、教師の余計な言葉が発端でクラスからいじめられたりは誰もがきっと経験することだ。

 僕はそれ以上深く考えない。

 このことに答えを出したところで解決されることは何もない。

 結局明日も憂鬱な日常が続くんだ。

 陰鬱とした考えしかできずに生きられないなら少しでも考えずに生きることが吉だろうと逃げるのがいいだろう。


 家に到着するとリビングで親が僕のことを待ち構えていた。

 きっとカウンセリングでのことだろう、まあんなのただの意見の押し付け合戦以外の何物でもないのだが。

「聞いたわよ、先生から。途中でカウンセリング放棄したんですって?あのね、私たちもねあなたのことが心配なのよ?その気持ちを少しは汲み取ってくれないのかしら?」

  母があのカウンセラーと似たように意見を押し付けてくる。

「お前ほんとは死にたいとか思ってないんだろう?ただの中二病だろ?」

 父に関しては現実逃避的な発言をしてくる。

 親はそろって自分たちが否定されるのが怖いのだろうか?

 何を考えているかはわからないし何も変わらない。

「あ~はい。そうですか」

 僕はそう吐き捨てて部屋を去ろうとするが親が引き留めようとしてくるが本当に邪魔そうな顔をしたら引き下がる。

 その後風呂へ入り自室へ帰りベッドへ寝転ぶ。

陰鬱な日々の中でも睡眠は夢を見ない時はいつも心地の良い睡眠がとれる。

 夢を見るといつも追いかけられて四肢をちぎられる夢、犬の肉便器になる夢、自分だけが置いていかれる夢など陰鬱なものしか見ない。

 賭け事のような感覚だが、幸せとも何とも思えない行為なので僕は空っぽの頭で目を閉じる。

 あぁ。明日はどんなに陰鬱な日常だろうか...

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