第4話 魂の成長
「今回のお主が獲得したソウル・ポイントは……512756っ!。こりゃこれまで地球への転生した魂達が獲得できたソウル・ポイントの最高記録を上回る数字じゃないかっ!。世界統一を果たす大統領になったわけでもないのに一体何をしてこれだけのポイントを叩き出しよったっ!。LA7-93よっ!」
「それは秘密だよ。閻魔大王なら僕の人生をもっとよく調べてみればいいじゃない、閻魔のおっちゃん」
「むむむっ……こんなゲームをやってばかりの人生に一体どんな秘密があるといううんじゃ。こりゃ地球を設計した神の奴に直接聞いてみんと分からんわ。まぁ、とにかく今回も天国行きであることに変わりないからもう行って構わんぞ、LA7-93」
「うん。それじゃあまたね、閻魔のおっちゃん」
【転生マスター】のスキルを取得し再び地球への転生から霊界に帰還した僕はなんと前回の2倍以上にも及ぶソウル・ポイントを獲得することができていた。
魂の記憶と思考を有していたおかげでより全ての時代で効率的な人生を送ることができたおかげだ。
ゲームだってアビス・アガルタ以外に初めて西暦2080年以降の世界にまで転生してフルダイブ型のVRゲームまでクリアすることができた。
それ以上先の地球にはまだ転生したことはないけど一体どんなゲームが発売されているのか気になる。
でも流石に次は地球以外の世界に転生しようかな。
「ただいまーっ!」
「お帰りなさいませ、マスター。如何でしたか。【転生マスター】のスキルを取得しての転生した世界での人生は」
隠しページのスキルのことだけど僕自身が生み出した従者であるアイシアには別に知られても構わない。
只アイシアから他の者に漏れたとしても当然僕が知らせたと見做されて【転生マスター】のスキルは没収されてしまうことになるだろう。
「もう何から何までが新鮮で最高だったよっ!。獲得できたソウル・ポイントも今までで一番多かったし早速魂を成長させたいから早くソウル・マネジメントの画面を開いてっ!、アイシアっ!」
「畏まりました」
「おっと……。でも先に次の転生先の世界を決めておいた方がいいかな。どうせならその世界に合わせて魂を成長させておきたいし……」
「次は地球以外の世界に転生なさるのですか?」
「うん。ちょっとランク2の世界のページを開いてみて、アイシア」
「畏まりました」
僕達魂の転生先のなる世界にはそれぞれにランクが設定されている。
ランクが高い程僕達魂にとっては過酷な世界ということになるが、その代わりより広大でスケールの大きい世界が僕達を待ち受けてくれている。
これまで僕がずっと転生を繰り返して来た地球はランク1の世界。
僕達魂が自らの存在の在り方を確認する為に用意された最も基本的な世界だ。
けどそれ故に色々な制限があって転生の自由度が狭く、【転生マスター】の転生スキルを取得する為にこれまで何度も地球に転生してきた僕としては正直物足りなくなってきていた。
勿論地球の世界にはまだまだ僕の堪能できていない醍醐味も沢山残っているだろうけど僕としてはそろそろ他の世界の転生がどんなものか経験してみたい。
ランク2の世界からは地球では空想の産物に過ぎなかった魔法等の存在が数多く登場する。
地球でアビス・アガルタのようなファンタジーゲームをずっとプレイしてきた僕は今までゲームの中でしか体験し得なかった魔法の存在する世界に転生するのが楽しみで仕方なかった。
「『ソード&マジック』……。剣と魔法の広大なファンタジー世界を自由に冒険しよう……か。魔法が登場する世界では一番難易度が低いみたいだし次に転生するのはこのソード&マジックの世界にしようかな」
・『ソード&マジック』 世界ランク2
剣と魔法の広大なファンタジー世界を自由に冒険しようっ!。
冒険者となってダンジョンの探索に挑むもよし、鍛冶屋となって伝説の装備を造
るもよし、酒場の
万が一モンスターに転生してしまった時は容赦なく冒険者達を打ち負かしてやれ
っ!
ランク2の世界のページに目を通していくと『ソード&マジック』という名の世界が僕の目に止まった。
他にも魔法が登場する世界はいくつもあったがどうやらこの『ソード&マジック』が僕のイメージする
あまり悩んでばかりいても仕方ないので僕は次にこの『ソード&マジック』の世界へと転生することを決めた。
「転生先の世界も決まったことだし次はソウル・ポイントを使って僕の魂を成長させないと……。だけど一体どんな風に魂を成長させればいいんだろう。魔法が存在する世界ってことはやっぱり
「ですが魔法が存在する世界だからといって必ずしも魔法が扱えるわけではなく剣や斧等の武器を用いて戦わなければならない場面も多々あるのではないでしょうか。その場合は
「そうだね……。
転生先の世界はすぐに決めることはできたがソウル・ポイントを使っての魂の成長はそうすんなりとはいかなかった。
成長させること自体は只ソウル・ポイントを消費するだけなんだから難しいも何もない。
問題は自らの魂のどの項目を成長させるかだ。
・ソウルナンバー・LA7-93の現在のステータス
魂Lv1
取得済み転生スキル
【転生マスター】
このスキルを取得した者は如何なる状態の生命であろうと魂の記憶と思考を有し
た状態で転生を行うことができる。
保有ソウル・ポイント
512756
僕のステータス画面を見て貰って分かる通り僕達魂の成長要素には8つの項目がある。
まずは僕達魂の潜在的な能力値を示す魂Lv。
次に転生先の器の基本的な能力を決める
最後に転生先の器に更に幅広い個性を持たせることのできる転生スキル。
僕魂はソウル・ポイントを消費することでこの8つの項目を好きなように成長させていくことができるのだが、これまで【転生マスター】の転生スキルを取得することばかりに夢中になっていた僕にはその明確なビジョンがない。
取り敢えずは魔法を使えるようになってみたいという程度だ。
だが魔法を使うにしても転生先の世界でどのような魔法を習得するのか。
また魔法を扱える存在に転生するにはどのような条件を満たさなければならないのか。
事前に入念な準備を整えておかなければ転生先の世界で有意義な人生を送ることはできない。
「う~ん……やっぱりここは無難に魂Lvを上昇させておくべきかなぁ。アイシアの言う通り下手に
「いえ。確かに先程は私も不測の事態を想定しておくべきだと忠告しましたが、【転生マスター】であるマスターならば他の者達よりもそのようなリスクはかなり軽減できているのではないでしょうか。魔法が使えないにしても自身の魂のステータスがどのようなものか常に把握しているマスターならば対応策を講じるのも容易でしょうし……。例えば魔法が使えなかった時のセカンドプランとして【剣術】の転生スキルを取得しておくとか。そうしておけば無事魔法が扱えた時は魔法を主軸として、万が一魔法が扱えなかった時は剣を主な武器として扱っていくことができます」
「なる程……。確かに剣なら特別な才能がなくても扱えるだろうし、剣と魔法の世界っていうぐらいだからどの時代を通しても主流の武器の1つとして存在しているだろうからね」
「そもそも
「そっか……うん……そうだよっ!。折角転生マスターになったんだから無難な考えなんか捨ててもっと自分の成りたいと思う姿をイメージして魂を成長させればいいんだよっ!」
魂Lvは転生先の僕達の器の総合的な能力に、各ステータスはそれぞれの値が対応する能力に、転生スキルはその効果の対応する能力に影響を及ぼす。
順に効果の範囲が狭まると共に効果の及ぼす影響の度合いが大きくなってくる。
魂Lvを上げるだけではどれだけ転生先の器の能力が優れたものになろうともその人生は平凡なもので終わってしまう可能性が高い。
より有意義な人生を送る為に具体例を上げるとすると例えば地球の世界に転生し100メートル走の競技で世界のトップ選手に成りたいとする。
その場合は魂Lvを上げるよりも
しかしその選択には高いリスクも付き添って来る。
魂Lvよりステータス、特に転生スキルにおいては高い効果が得られる分その効果の範囲が非常に狭い範囲に限定されている為その効果を活かせる人生を送れなかった場合完全な死にスキルとなってしまう。
短距離走の選手としての転生スキルを取得しても転生先の世界ではその記憶が無い為自分の才能に気付けず、短距離走どころかスポーツとすらほとんど縁のない学者やアーティスト、単純に生活の安定を求めて公務員等を目指してしまうことも十分にあり得る。
更には中途半端な才能が災いしてその分野の仕事に執着するあまり人生を棒に振ってしまう可能性も考えられるだろう。
スポーツ選手やアーティストとして活動を続けながらも中々成功を収めることができない人々を地球の世界で僕は何人も見てきた。
勿論成功するしないに関係なく自分の好きなことに絶えず従事することのできた人生に満足している者達も大勢いたが。
そういった事態を避ける為に僕達魂の間では最初は魂Lvを上げるのが一番無難な選択だと謂われているのだ。
それなりの仕事に就いてそれなりの相手と結婚してそれなりに幸せな人生を送る。
平凡ではあるがソウル・ポイントもそれなりに獲得できるだろうし最初の内は無理に特別な人生を送ろうなどと考えない方が良いだろう。
しかし【転生マスター】の転生スキルを取得した僕にとってこの話は違ってくる。
なんせ転生先の世界で魂の記憶と思考を有した状態、つまり今現在こうして霊界に存在している僕の意識のまま転生を行うことができるのだ。
事前にどのような魂の成長を行ったか完全に把握している僕ならば効果の範囲が限定されている転生スキルであっても転生先の人生で確実にその効果を活かし切ることができる。
アイシアからの助言でそのことに気付いた僕は魂Lvを上げる等という無難な選択は止めてかなり思い切った魂の成長を行うことにした。
《ソウルナンバー・LA7-93は【錬金術師Lv1】のスキルを取得しました》
《ソウルナンバー・LA7-93は【錬金術Lv1】のスキルを取得しました》
《ソウルナンバー・LA7-93は【武器錬成Lv1】のスキルを取得しました》
《ソウルナンバー・LA7-93は【剣術Lv1】のスキルを取得しました》
・ソウルナンバー・LA7-93の現在のステータス
魂Lv1
取得済み転生スキル
【転生マスター】
このスキルを取得した者は如何なる状態の生命であろうと魂の記憶と思考を有し
た状態で転生を行うことができる。
【錬金術師Lv1】
スキルのLvに応じて転生先の世界で錬金術師の職に就くに近しい環境に出生し
やすくなり錬金術の技量も上昇する。
【錬金術Lv1】
スキルのLvに応じて転生先の世界での錬金術の技量が上昇する。
【武器錬成Lv1】
スキルのLvに応じて転生先の世界での武器に関する錬金術の技量が上昇する。
【剣術Lv1】
スキルのLvに応じて転生先の世界での剣の技量が上昇する。
保有ソウル・ポイント
211300
「よしっ!。取り敢えず目ぼしい転生スキルはこんなところかな」
「マスターは錬金術師になりたかったのですか?」
「うん。実は地球の世界で見た錬金術師の漫画にすっかり嵌っちゃって。その漫画の主人公は両手を合わせただけで一瞬で武器を錬成してて僕もそんな風に格好良く戦えたらいいなって」
「錬金術師といえば私としてはポーションなどを調合して仲間のサポートを行っているイメージがありますがそのように最前線で戦う者もいるのですね」
「あくまで漫画の世界の話だから本当にそんな風に戦えるようになるか分からないけどね」
僕は魂Lvやステータスを上げるのではなく転生スキルを取得して魂の成長を行った。
取得した転生スキルは主に【錬金術】系統のものとアイシアに助言して貰った【剣術】。
【錬金術師】の転生スキルは錬金術師の職に就くに適した環境に出生する確率を上げるだけでなく錬金術の技量も上昇させることができる。
【錬金術】の転生スキルは出生する環境には影響しないが錬金術の技量への上昇効果は【錬金術師】よりも高い。
各転生スキルにはLvが設定されていてLvを上昇させると共に効果の程も高くなっていく。
「まだソウル・ポイントが残っているようですが他はどのような転生スキルを取得するつもりなのですか、マスター。それとも残りは流石に魂Lvの上昇に回すおつもりなのでしょうか」
「ふっふっふっ……。実はこのポイントはある重要な転生スキルを取得する為に残していおいたのだよ。この転生スキルの効果を知ったらきっとアイシアもビックリするよ~」
「私が驚く?。それは一体どのような転生スキルなのですか、マスター」
「慌てなくても今そのスキルを取得してあげるよ。ジャ~ンっ♪」
《ソウルナンバー・LA7-93は【従者Lv1】のスキルを取得しました》
【従者Lv1】
自身がソウル・ポイントを使って生み出した従者を1人まで転生に連れ出すことが
できる。
Lvが上昇する事に転生先の従者の能力に補正が掛かり、また一定のLvに達する
ごとに連れ出すことが可能な従者の人数が増加する。
「こ……この転生スキルはまさかっ!。私もマスターと共に世界に転生できるようになるのですかっ!」
「そうだよ。僕がこの【従者】の転生スキルを取得したことでアイシアもソウル・ポイントが使って魂を成長させられるようになっただろうし残りのポイントはアイシアに好きなように使わせてあげるよ」
「そんな……。転生先の世界までマスターのお供をさせて頂くだけでも幸栄なのにマスターを差し置いて私がポイントを使うわけには……」
「そんな遠慮する必要ないって。転生先の世界でアイシアが活躍してくれれば僕としても大助かりだし、ソウル・ポイントの獲得量だって一気に2人分に倍増するわけなんだから。アイシアが使った分のポイントぐらいすぐお釣りとなって返ってくるよ」
「そうですか……。ではできる限りマスターのお力となれそうな転生スキルを……」
《アイシアは【守護霊Lv1】のスキルを取得しました》
《アイシアは【護衛Lv1】のスキルを取得しました》
《アイシアは【剣術Lv1】のスキルを取得しました》
《アイシアは【魂の名前・アイシア】のスキルを取得しました》
・アイシアの現在のステータス
魂Lv1
取得済み転生スキル
【守護霊Lv1】
転生先の世界で死亡した後に守護霊として活動できるようになる。
この守護霊としての復活は各世界の転生の回数にカウントされない。
Lvが上昇する毎に守護霊として復活できる確率と活動可能な期間が増加する。
【護衛Lv1】
対象を護衛する役割に就く、もしくは自身にそのような意志が働いている際にそ
の意志の強さに応じて自身の能力が上昇するようになる。
スキルのLvが上昇する毎にその補正効果も大きくなる。
但し対象の護衛を失敗した場合は一定期間の間自身の能力が減少する。
この減少補正はスキルのLvが上昇する毎に小さくなる。
【剣術Lv1】
スキルのLvに応じて転生先の世界での剣の技量が上昇する。
【魂の名前・アイシア】
転生先の世界で事前に自身が選択した名前に命名されるようになる。
「しゅ……【守護霊】って……。そんな転生する前から自分が死ぬことを想定した転生スキルを取得しなくても……」
「転生先の世界でどのような出来事が待ち受けているか分かりませんから。万が一マスターを残して死亡してしまった際にもマスターをお守りできるようこの転生スキルを選びました。それに【守護霊】とはその名の意味する通り死後霊体となって対象を守護する存在。私がもう1つ取得した【護衛】の転生スキルとも非常に相性が良いものと思われます」
「護衛する意志の強さに応じて能力が上昇するって書いてあるし確かに守護霊となった後のアイシアの能力は凄まじいものになりそうだね。でもいくら僕の魂の従者だからってここまで僕のことばかり考えなくたっていいのに……。僕としてはいつも世話して貰ってるお礼としてアイシアも転生先の世界の自由に楽しんで欲しかったんだけどなぁ」
「後は私も『ソード&マジック』の世界で一番主流の武器になると思われる剣を扱う為【剣術】の転生スキルを取得しておきました」
「この【魂の名前・アイシア】っていうのは転生先の世界でもアイシアはアイシアって名前で生まれるようになるってこと?」
「そうだと思います。ステータスには何の影響もありませんが私としては転生先の世界でもマスターから頂いた名前でいたいと思いこちらの転生スキルを取得致しました。私の我儘でこのような実用性ない転生スキルを取得してしまい申し訳ありません」
「いいよいいよ。アイシアの好きなようにポイントを使っていいって言ったのは僕なんだから。それにアイシアが1つだけでも自分の為の転生スキルを選んでいてくれて嬉しく思う。さて……これで2人共魂を成長させ終わったし早速『ソード&マジック』の世界に転生しに行こうっ!」
「はい、マスター」
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