謎は全て解けた
「よかったよかった。さすがに心の友たちを拒絶されたら、怒り心頭だったよ……!」
怒られなくてよかった……。
「私」はこれ以上、祈里の機嫌を損ねずに済んで安心する。
『……ところでさ』
「うん?」
心に余裕が出来ると、親友二人に改めて思う所があって、どうしても気になり聞かないとむずむすするので尋ねる。
『……よっちゃんとまーちゃん、中身と外見、逆じゃない?』
「うんそだね、私もつくづくそう思ってる」
文化部の活発元気娘と体育会系の寡黙文学少女。
どうしてここまで入れ違ったのか。
「学校の七不思議の一つに検討されてるくらいだよ……」
『いや、そこまではさすがにないでしょ』
冷静に突っ込む「私」。
「うん。というか七不思議とかうちの学校にないし」
そんなものは創作の中で話を面白くするためのネタに過ぎないと、祈里は言い切った。意外に現実的なんだなと思った。
「さっきから誰と喋ってんの? 頭でも打ってついに霊でも見えるようになったか?」
「ついにって何よ。そんなフラグあったかね?」
「いや祈里は元々頭おかしいから、これ以上はおかしくならないだろ。だったら霊能力に目覚めたかと」
「ん、美香、名推理」
『ぷっ』
思わず吹き出してしまう「私」。
「てめえら……」
怒りをあらわにする私。
「ま、新しい子が来たんでしょ」
ひたすらフラットに茉莉が答えを言ってしまう。
「素っ気ないなあ。そうだよ。今日の朝生まれたんだ」
「あーそっか。もうそろそろって昨日も言ってたもんな。じゃ、初めまして祈里、親友のよっちゃんこと美香だ」
「同じくまーちゃんこと茉莉。よろしく」
『よ、よろしく』
「よ、よろしくだって」
『つかえたのは再現しなくていいから……!』
「はいはーい。今度から気を付けます」
そんなセルフ喧嘩を生暖かい目で友人たちは眺めている。
「あいあい、よろしゅうなー」
「ん、よろしく」
「でもよ。お二人さん」
美香が珍しく真面目な顔で忠告してくる。
口に出して会話するのはやめた方がいいぞ?
「まあだいたいの人間が通った道だから、察してくれるとは思うがね」
「あー……、そうか、だから学校来る時、みんなが私を見てたんだ!」
謎は、全て、解けた。
「てっきり今日の私のびぼーが格別に輝き過ぎているのかと」
「「自分で言うなよ」」
『自分で言うなよ』
というか登校中の一人二役の掛け合いを、しかも祈里のセリフだけ抜き出して公衆の面前にに晒していたなんて。
「私」は自分のことで精一杯だったから気づかなかったけど、きっとたいそう奇異の目で見られていたに違いない。
『恥ずかしい……穴があったら入りたい……』
「そんなら心のあなに……おっといけないいけない」
『心の穴に潜んでなさい』
初めての心内会話は変な感触だった。
「私」の
フォークのような鋭さはなく、スプーンの丸みでつんつん突かれているようでこそばゆい。
他に例えるなら、耳たぶにふっーと生暖かい息を吹きかけられているようなじれったさ。
『ふーふー』
『やめて、本当にくすぐったいからやめて』
『えへへ。これはあれだ。テレパシーだな、何というか………………すごいな』
『語彙の乏しさがすごい』
我々は超能力者になったのだーと妙なテンションで浮かれる私を、「私」は心のジト目で眺めていた。
こいつ、精神年齢が実年齢よりかなり低いのではと本気で不安になった。
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