第7話 相棒の思いに涙ですわ!! の巻
「すいませんでした、ウチのロビンが……」
「いえ、こちらこそ……お父さんが、身体で払えなんていうから……」
互いに謝りあうケヴィンと女の子を尻目に、私は串焼きを追加で食べていた。財布もあるしね。もう何も怖くない。
「あの、サービスしますから、今後ともごひいきにお願いします」
女の子は、ぺこぺこと頭を下げる。
彼女の名前はユイというそうだ。お父さんがあんなので苦労するね、というと、彼女は困ったように笑ってた。
「はい、どうしようもない人です。だらしないし、いっつもお腹かお尻搔いてるし、売り上げでギャンブルするし。……でも、串焼きは本当に美味しいんです」
「……そうね。あんな人が焼いたとは、思えないくらい美味しい」
「あんな人でも、私には、あの人しかいないから……」
そう言うユイの目には、なんだか濁った光が見えた。……あれ、そういう感じ?
心なしか、串焼きをせっせと作る父親に対し、少女らしからぬ目をしている気がするが……いや、きっと気のせいだろう。
「……ご、ごちそうさま」
両手を合わせて、私はさっさとこの場を離れることにした。
「まったく、勘弁してくれよなあ。あー、まだ腰痛いや」
「お父さんが悪いんだからね。でも、安心して? ちゃんと、私がマッサージしてあげるから」
「おう、悪いな」
父の後ろにそっと寄り添い、腰をさする少女の姿を見ながら、私とケヴィンは市場を離れた。
********
「……ねえ、アレって」
「我々は何も知らない。いいですね」
「あ、ハイ」
きっと踏み込んではいけない領域なんだろう。
「ところでロビン、クエスト受けたいって言ってましたよね」
「え? うん、言ったけど」
「……はい、これ」
ケヴィンは一枚の紙を、私に向かって見せる。
それは、クエスト受注の証、クエストシートだった。
「……え?」
「取って来ましたよ。討伐クエスト、しかもミノタウロス」
「あなた、まさか……!!」
私がやさぐれて飛び出している間に、ケヴィンはクエストを探してくれていたのだ。それも、私が喜びそうな、討伐クエストを。
「大変でしたよ。なりたてはまずは採取や調査系のクエストをして、現場なれするもんだって受付の人にも散々……ロビン?」
「あなた、あなた……!! だって、私のために……!」
気付けば、私は大粒の涙を流していた。なんだか、自分のしていたことがとっても恥ずかしくてたまらない。自分が好き放題やる間に、ケヴィンは私のために動いてくれていたというのに。
「……ケヴィン……!! ありがとう!!」
私は場所もはばからず、ケヴィンに熱い抱擁をした。
「ぎゃああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
直後、ケヴィンは絶叫である。驚いた私はぱっと彼から離れた。
まったく、恥ずかしがっちゃって。そんな叫ぶことないじゃないの。
それに、そ、そういう仲になっても、私は別に吝かでもないし……
「……殺す気ですか―――――――――――っ!!」
「……え? ……あっ」
ケヴィンの顔は真っ赤を通り越して、真っ青だった。
筋力差のことをすっかり忘れていた。
私のハグって、彼にとってはデビル・ト●ボーイくらいの締め付けなんだった。
危うく、身体がバラバラに吹き飛ぶところである。
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