第2話 ロビィナの過去! の巻
前世の存在に気づいたのは、4歳の時に頭をぶつけた時だ。
かつての私の記憶は、断片的にしか思い出せない。自分のかつての名前も、親の顔も、友達の顔も。ましてや、自分がどのように死んだのかすら、思い出せることはなかった。
だが、はっきりと覚えているのは、小さいときに行っていた床屋にあった漫画。あれが、私という人間の形成に多大な影響を及ぼしたのは間違いない。
お母さんと一緒に髪を切りに行って、お母さんの方が時間がかかったんだな。それで、待ち時間に暇つぶしに手に取ってみたわけだ。あの漫画を。
それは超人と呼ばれる人間を超える力を持った主人公とその仲間たちが力を合わせて悪と戦う、いわゆる王道なバトル漫画だった。
幼い私は、がっちりとハートキャッチされてしまったわけである。
主人公は決してかっこよくはない。どっちかと言うと、仲間の方がかっこいい。だが、周りの友達が好きそうなイケメンな男主人公よりも、こういう3枚目だけどいざというときはかっこいいタイプの方が私は好きだった。
相当昔の漫画だったらしく、集めるには骨が折れた。小学校に入り、毎月のお小遣いがもらえるようになるとコツコツと集め始めた。とはいっても、紙媒体はほとんどなかったので電子書籍だけど。
そんな漫画だと、趣味の合う友達は誰もいなかった。女子はもちろん、男子どもも肉体よりも刀で戦う漫画に夢中だ。傘を持てば、皆チャンバラに興じている。
結局、一人でずぶずぶと沼にはまるしかなかったのだ。周りに合わせて生きていたから、家に呼ぶこともできない。私の部屋は推したちのグッズで溢れていた。とてもじゃないが見せられない。理解されないことは、私自身がわかっていたのだ。
それからの記憶は、ない。
つまり、学校に通うくらいの年齢で、私の前世は終わってしまったのだろう。
*************
そして、前世の記憶が戻ったことで気づいたことがある。この世界の事だ。
『ラバラント戦記』。そこそこに流行っていた、乙女ゲームである。イケメンの仲間を集めて、ヒロインが最後は魔王を倒すという、いかにもありがちな物語に恋愛要素をねじ込んだゲームだ。
ロビィナ=ダイナスティは、ゲームの最序盤で婚約破棄され、落ちぶれる令嬢だった。その理由が、主人公であるリン=マンタレイをいじめていたことで、序盤で仲間となる王子はリンに一目ぼれし、彼女を助けるために私を婚約破棄してしまうのだ。
国の大臣の娘という立場の私は家を追放されてどんどん落ちぶれて行き、最後は魔王の部下として主人公のリンに倒されるという最後を迎える……だったはずだ。
つまりは、私は小物も小物に転生してしまったという事になる。
だが、そんなことは正直どうでもよかった。
私は転生に気が付いてすぐに、自分の部屋である言葉を唱えた。
「……ステータス!」
すると、私の前に黒い下地に白線の板が現れる。触ることはできないが、そこに書かれている数字を読むことができた。というか、完全に日本語だ。
ちなみに、当時の私のステータスはこんな感じである。
―――――――――――
【ロビィナ=ダイナスティ】 【レベル1】【火属性】
体力:6
魔力:7
力 :5
守り:4
魔法:5
魔防:5
速さ:6
器用:4
――――――――――――
ゲームの世界なのでもしかしたらあるのかなと思ったら、本当にあった。それにしても貧弱にすぎる。4歳の少女のものなので仕方ないっちゃ仕方ないけど。
ちなみに、このゲームは女の子が主人公だからか、数字での表現は比較的マイルドだ。最高でも999であり、そこまで上げればほとんど敵なしの状態である。
だが、このステータスを見て、私はある考えにたどり着いた。
「……もしかして、これ、力を上げたら必殺技、再現できるんじゃない……!?」
かつての世界では、思ってもかなわないと諦めていた、あの夢。
私を魅了した数々の必殺技を、自分の手で決める……!
バ●ター、ドラ●バーはもちろん、風林●山やタワー・ブリ●ジ! 肉体の構造的に再現が無理な技も多々あるが、それでも再現できそうな技は数多い。
「……これは、やるしか、ないわね……!」
じゅるりと垂れる涎を拭いながら、ロビィナは決意をしたのだ。
自分は必ず生き残る。そして、必殺技を決めるのだと……!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます