　ヤバイ、一目惚れだ。

　俺が取っている、とある一般教養の哲学のクラスはズームを使った同期授業だ。そこでのグループディスカッションで俺の脳天に何かが走った。

　その子はなんと俺と同級生で学科まで一緒だった。学科はクラスが二つに分かれているため、今まで気がつかなかった。クラスの女子は全員把握しているため、クラスさえ同じだったら気がついていただろう。

　理系の大学で女子の少ないために大学の恋愛は諦めかけていたのだが、ニコニコとしながら的確に話を進めていく彼女に惚れるしかなかった。ランダムで振り分けられてその子と一緒になったことに感謝しかない。

　その時は「幸せ」について話すということだから、自然と話題は恋人の話にもいった。

「丸山さんは彼女いるの？」

　この度同じ学科でクラスまで同じだったことに気がついた男子に問いかける。反応を見て彼女にも聞こうと思ったのだが、丸山さんに彼女がいることがわかってマウントを取られた気分になった上に、その子は「直球ですね」と目を丸くするだけだ。もう一人の女子みたいに「羨ましいー」とかいう反応をしてくれたら彼氏の有無が分かるのに！見習ってくれ‼︎

「直接会えるのはいつでしょうね」

　俺は一縷の望みをかけて言った。

「次の四月ですね」

　彼女はにべの無い受け答えだ。それはそうか。

　全体になってしまってみんなのマイクとビデオがオフになる、ブレイクアウトルーム終了まであと五十秒。俺はその子の顔を目に焼きつけた。