第133話 ダレグへと向かう
その後朝食を摂った後、念の為にと言う事で三組は固まってマホヴァーまでの道中を進んだのだが、それは杞憂に終わり何事も無くマホヴァーに到着出来た。
町に入った所でシリルと言うもう一人の商人一行と別れ、チェスターとコリン、冒険者パーティー「鋼の誓い」のメンバー五人は、馬を調達する為に馬屋へと向かったので拓哉達も同行した。
何故なら、チェスターとコリンの幌馬車は、拓哉がストレージに入れていたからだ。
流石に馬の居ない馬車を出し、この場で「はい、さようなら」とはいかないだろう。
なので、最後まで付き合う事となったのだ。
とは言っても、馬屋まで行って、馬車を出して別れるだけだが。
チェスターとコリンに馬車を返した後、拓哉達はそのまま町を出てハザロフへと向かう。
ここから先、大して変わった事は無いので省略するが、ハザロフまでの途中で一度野営をし、翌日にハザロフを通り過ぎる。その後、馬車のスピードを多少上げ、その日の内にロコスへと到着。ロコスでは、宿を取り一泊し翌日、孤児院へと寄付をして町を出る。
その後、ジーハ、ラーツ、プラハシュと5日掛けて回り、再びジーハへと戻った。
再びジーハの町を出た拓哉達は、西の門から出ると北西に位置するダレグに向かう。
ダレグまでは徒歩で2日。馬車で約一日半だ。
途中、湿地帯を通るらしく、その湿地帯にはちょっと変わった魔物が居るらしい。
そして、その湿地へと差し掛かり、ちょっと変わった魔物を見た拓哉達は、顔を顰めて感想を言う。
「これは・・・気持ち悪い。」
「確かに、珍しいかもね。でも、気持ち悪い」
「うん。向こうでも最近中々見る事が無いよね。気持ち悪いけど。」
この街道、少し離れた所にある二本の川に挟まれており、そこを流れる水が地面へと漏れて溜まり足元がぬかるんでいる。
治水工事をすればいいのに。と思うが、結構広範囲な為に、費用が莫大掛が出来ない。ならば、ここを迂回すればいいのでは?と考えるが、そうなるとダレグまでの時間が倍近く掛かる。
結局、湿地の一部に石を敷き詰め、街道としたのだが、染み込む水が多すぎて結局あまり役に立ってない。ただ道自体は見えるので、脱輪したり埋まったりすることが無いのが幸いだろう。
そんな水浸しの地面を、ウネウネと蠢く細くて長い生き物。
そう、ミミズだ。現代日本の都会っ子の三人は、確かにあまり見る機会は無いかもしれない。いや、あったとしても気が付いてないだけかもしれないが。
だが、このミミズの大きさは全長40cmから50cm程あり、蛇だと言ってもおかしくない大きさだ。気が付かない訳がない。
しかも、これが単なる生物では無く、ミニワームと言う安直な名前の魔物だというのだから驚きだ。
比較的おとなしい魔物なので、襲って来る事は無いが、その数の多さが気持ち悪いのだ。
「うへ~。ウジャウジャしてて気持ち悪い。」
「確かにね~。」
「私、馬車から絶対に出ないわ。」
そんな会話をしつつ、拓哉達は馬車の中からその光景を見ている。
そしてこの街道は、湿地帯と言う特色もあり道幅が狭い。
なので、御者のセバスチャン以外は、全員馬車の中へと入っている。
「後、半日すればここを抜ける、それまでの辛抱だな。」
この光景を見ても、全く動じていないカルヴィンが拓哉に向かってそう言って来る。
「後、半日もこの光景なのか。」
しかし拓哉は、半日も我慢しなければならないのかと溜息を吐いた。
数時間、我慢をした甲斐ありようやく湿地を抜ける。
抜けた先を少し進み、日が傾き始めたら野営する。
とは言っても、マジックハウスをだすだけだが。
マジックハウスで一晩を過ごした翌日、半日程馬車を走らせるとダレグへと到着する。
王都から離れているからか、オルトラークに比べて小さな町だ。
そんな町なので、宿屋も少ない。
贅沢だとは分かっているが、王都の様な少し高級な宿が無いのだ。
仕方がないのでと、この町の中でも一番高い宿をとったのだが、部屋が狭くベッドが硬いのだ。
「これは、結構しんどいね。」
「そうね。マジックハウスのベッドの方が、寝やすいね。」
女性陣には不評だった。
そして、食事もやはりと言うか、そこら辺にある宿の料理とあまり変わらない。
とりあえず、腹がいっぱいになれば。そんな感じで、作業として腹へと入れた。
翌日、孤児院へと寄付をする為に向かうと、ここの孤児院は結構酷い有様だった。
パッと見てわかるほどに屋根は完全に崩れ、壁には穴が開いており、いつ崩れてもおかしくない程にボロボロだったのだ。
流石にこれには、拓哉も顔を顰める。
本来、孤児院には領主から援助金が出ている筈なのだ。
微々たるものかもしれないが、それが孤児院の資金となっているのだ。
それに加えて、建物の修繕などもある程度、領主が何とかするのが普通なのだ。
無論、教会もと付くが。
だが、この町の孤児院は目も当てられない程ボロボロで、しかも隣に併設されている教会もボロボロだ。
「これ、教会も領主も何の対策もしてないのかな?」
「どうだろうかな。本来なら、教会も修繕くらいはするだろうと思うのだが。」
カルヴィンがそう答えてくれるが、それがされてないからこその、今この会話なのだ。
「ん~。ま、とりあえず入って聞いてみようか。」
「そうだな。俺は、外で奥方をお守りしている。」
「ああ、頼むよ。」
拓哉は、馬車と涼子、春香の事をカルヴィンに任せると、ブロルと共に孤児院へと入って行く。
「すみません。」
拓哉は入り口の扉を開けてそう言う。
すると、中から一人の女性が現れる。
「はーい!どちら様ですか?」
見た感じは、拓哉と同じくらいの年齢だろうか。
ただ、その体型はかなりやせ細っており、顔も少し窶れ気味だ。
そして、何故かシスター服を着ていない。
「あ、初めまして。オルトラークでトウジョウ商会と言う商会を営んでおります、タクヤ・トウジョウといいます。今、宜しいですか?」
「あ、はい。汚い所ですが、こちらへどうぞ。」
そう言って、中へと通される。
通された場所は、応接室。なのだろうが、如何せんソファーはボロボロ。センターテーブルは傾いているという始末。
「申し訳ありません。ここは、もう破棄されるものですから。」
そう言って頭を下げる女性。
「破棄ですか?」
「ええ。実は。」
そう言って話し始めた内容に、拓哉は頭を抱えた。
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