第110話 第一回異世界人全体会議①

涼子達の話を聞いた拓哉は、速やかに異世界人全員を招集した。

理由は、全員の意思を確認する為だ。

ちなみにこの中には、棚芝彰空、木田川烈、桂川琉穗、横山愛月、五十嵐佳央理も含まれている。

何故この五人が含まれているかと言うと、棚芝と木田川は別として、桂川、横山、五十嵐は今では店の正規職員となっているからだ。もし拓哉達が元の世界に戻った後、この五人が店や商店を乗っ取る。なんて事が無いよう、彼らの意思も確認しておきたかったのだ。


「さて、今日は休みなのに集まって貰って悪い。少し、みんなの気持ちを聞かせて貰えないかと思って集めた。」


拓哉はそこまで言うと、全員の顔を見渡す。


「まず俺から報告がある。イシュカが妊娠した。」


その瞬間、どよめきが起こる。


「静かに!一応避妊はしていたんだが、どこで失敗したのか妊娠してしまった。これについては、俺はイシュカに子供を産んでもらおうと思う。」


その言葉を聞いた全員が、「うんうん」と頷いている。


「その話を、涼子達にも教えた。その結果、涼子、春香、美奈子、加奈子、裕美も、子供が欲しいと言う話になった。」


一斉に五人の方へと目が向く。

五人は、恥ずかしそうに顔を赤らめ俯くが、嬉しいのか口はニヤニヤと笑っている。


「そこで俺は、一度全員の意思を確認した方がいいのではないかと考えた。」


その後、拓哉の口から出たのは

①後、幾らでミッションクリアとなるのか。

これは男性陣に向けた言葉だ。

②クリア後、元の世界に戻りたいと思うか。

これは全員に対してだ。


この二点である。


「残りは、後1800億くらいかな。帰りたいかどうかと聞かれたら、俺は別にどちらでもいいかな。」


最初に口を開いたのは、拓哉の親友の龍平だった。

ちなみに、龍平と康太は残りが大体同じくらいの額で、亮平が1000億を少し切ったくらいだ。

拓也はと言うと、後4000億くらい残っている。


「龍平、なんでだ?」


「ん~。前から拓哉、康太、亮平とも話してるが、俺達この世界に来て既に二年が経ったよな?」


「ああ、そうだな。」


「戻る時って、何歳の姿で戻るんだ?来た時同様、18歳なのか?それとも、戻る時の年齢なのか?」


その問い掛けに、誰も答えれない。


「仮に18歳で戻れたとしてだ。俺達の記憶ってどうなってんだ?この世界で過ごした記憶は無くなっちまうのか?もし記憶を残したままで戻れた場合、死んだ奴らはどうなる?後、後発で帰って来るであろう棚芝や木田川はどれくらい後に戻って来るんだ?そこら辺を考え始めると、戻るのが恐ろしく感じてしまう。いや、戻りたくないってわけじゃないんだがな?」


龍平の言葉に、康太、亮平が頷く。


「お、俺の残りは、残り2000億を切ったくらいだ。」


そう口にしたのは、棚芝だ。

桂川と五十嵐の二人分を肩代わりしている。


「俺はミッションクリア後も、こっちの世界に残ろうと思う。」


拓哉は内心「あ~、やっぱりか。」と思った。その理由を知っているからだ。

棚芝は食堂で働く、孤児院を卒業した女の子といい関係となっているのだ。いずれ、結婚したいとまで周りに言っている始末。

絶対に帰らないだろうなと思っていた。


「俺は後1000億ちょいだ。」


次に口を開いたのは、木田川。

彼は、横山の分を肩代わりしており、その横山と付き合っている。


「俺は、愛月みるなと一緒なら、ここだろうが、元の世界だろうがどちらでもいい。」


そう言いながら、木田川は横山の方を見る。

横山は横山で、木田川の言葉にウットリとした目をしている。

リア充爆ぜろ!


「棚芝と木田川、横山の気持ちはわかった。桂川と五十嵐は?」


二人に話を振ると、二人は互いに顔を見合わせ、どうしたものかと悩み始める。


「まあいい。後でもう一回聞くから、考えておいてくれ。先に、康太、亮平、裕子、百合、智世、公子、葉子、里美、紗代子から教えてくれ。」


「ぼ、僕は、こっちに残るつもりだよ。」


顔を赤らめ話すのは、康太だ。

康太もまた、孤児院を卒業した女の子といい感じになっている。


「私は、龍平君に任せるわ。」


そう言うのは、公子。

意外や意外、公子は龍平と付き合っている。

やったかどうかは知らないが。


「俺達はどっちでもいいかな。なあ、紗代。」


「うん。亮平が居れば、どこでもいいよ。」


リア充こと、亮平と紗代子のバカップルだ。

人前でイチャイチャするのは、今も変わらない。


「わ、私は、ここに定住したい。」


昔から絵が好きで、この世界に来てからは漫画家として日々原稿を書いている里美。

少し前から、コピー機製本した本が商業ギルド経由で販売され始めたそうだ。

書いているのは、所謂少女少年漫画―――最初に書いたのは、俺達が海ダンジョンを攻略した事を題材にした漫画だった。言っておくが、BLではない。

その漫画が、現在老若男女にバカ受けらしく、コピー印刷で製本された100冊がすべて完売。商業ギルドから重版の依頼が来たほどだ。娯楽の少ないこの世界だから、当然と言えば当然かもしれない。

今や里美は、ノリにノッている漫画家となったのだ。そりゃ、帰りたくは無いだろう。


「私はどっちでもいいかな。現代機器が無い分、暇なのはこっちだけど、こっちはこっちでみんな居るし楽しい事には変わりないし。」

「ん~、私も百合ちゃんに同じ。どっちでもいいかな。」

「僕もどっちでもいい。」

「私もどっちでもいいかな。案外、こっちの世界も楽しいし。」


そう言うのは、百合、智世、葉子、裕子だ。

この四人には、今の所彼氏は居ない。なので、どっちでもいいのだろう。


「分かった。んで、そっちの二人は決まったか?」


拓哉は桂川と五十嵐の方を見る。

しかし、二人の心はまだ決まっていなかった。


「えっと・・・もう少し考えさせて。はっきりと帰りたいとも、帰りたくないとも決められないの。」

「私も。」


「分かった。最終的に結論が出たら教えてくれ。」


「「わかった。」」


「桂川と五十嵐以外の予定は分かった。んじゃ、俺の気持ちを言っておく。」


そこで言葉を切った拓哉は、全員を見渡す。

一通りの顔を見たのち、ようやく口を開く。


「俺は、元の世界へと戻る。ただし、『最終的には』と後ろに付くが。」


拓哉の言葉に、全員が首を傾げた。

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