第99話 打算

翌日、朝っぱらから9人を俺の部屋へと呼んだ。


「忙しいのに集まって貰って悪いな。」


流石に、店の事もあるし、警備の事だってあるのでそう言ったのだが、冒頭の俺の言葉に全員が頭を振る。


「それで、集まって貰った理由は、昨日の事をはっきりとさせておこうと思ったからだ。」


俺は、全員の顔を見回すが、春香、涼子、美奈子、加奈子、裕美、イシュカ、エヴァ、ロラさん、シーラちゃんの顔は強張っている。


「結論から言うと、みんなから好かれている事は嬉しいと思う。だけど、俺はまだまだみんなの事を良く知らない。だから、結婚は少し置いておいて、先ずはお付き合いからお願いします。」


そう言って頭を下げる俺。

みんなの表情は分からないが、空気が重い。


「そうね。私達も焦り過ぎたかな?」

「そうだね。」


と、口々に納得した言葉を言ってくれる。


「ありがとう。それで、証拠と言うか、俺の気持ちとして渡したい物があるんだ。」


俺はストレージから指輪を取り出す。


「結婚したらこれを左手に付けて貰うが、今は右手だな。」


そう言って一人ずつ右手の薬指にに指輪を嵌めて行く。

ただ、シーラちゃんに渡してもいい物か悩みどころなんだが。


「シーラちゃんは、お父さんとお母さんに話してからな?」


「うん。わかった。」


聞き分けの良い子で助かった。


「そう言う事で、今日からよろしくお願いします。」


これで、何とか上手く収まったと思う。

後は、戻るまでの間に時間を掛けて決めて行けばいいだろう。

右手の薬指を見てうっとりとしている女子達を他所に、シーラちゃんと共にアランさんとアグネスさんの元へと向かう。

仕事の手を休めて貰い、本宅の応接室に呼びだした。


「すみません、仕事中なのに。」


「いえ、構いませんよ。」

「私も、ちょうど一段落した所でしたので。」


俺の目の前にはアランさんとアグネスさんが。

そして、俺の隣にはシーラちゃんが座っている。

何故に隣?


「お二人がお聞きになっているかは分かりませんが、シーラちゃんが俺のお嫁さんになると言っておりまして。」


俺が何故こんな事を言わなければならないのかと、疑問に思うがとりあえず話だけは通しておかないとマズい。

ただこれ、傍から見たら単なる誑しじゃねえのか?


「ええ、聞いてますよ。まだまだ子供ですが、どうかシーラの事をよろしくお願いします。」

「そうですわね。タクヤさんならうちの娘を任せても問題はありませんわ。末永くよろしくお願い致します。」


「はい?」


どうやらこの件を知っていたらしい二人は、そう言って頭を下げる。

ハイ、話しが終わりました。

・・・そうじゃな~い!


「ちょ、ちょっと待って下さい!え?もう話済みなんですか?」


若干14歳の女の子の行く末が、既に決まっている事に驚く。


「ええ、ご主人に拾われて以降、シーラは「将来ご主人と結婚するの」とずっと言ってましたので。」

「そうですわね。タクヤさんなら、お嫁さんが何人居てもきっと全員幸せに出来るでしょうし。」

「そうだな。それに、シーラがご主人に嫁ぐと、我々もこのままここで仕事が出来るしな。」

「そうね、あなた。いずれは、カールもこちらで庭師をさせれるわ。」


そう言って二人は「ハッハ」「オホホ」と笑う。

完全に打算有きじゃねえかよ!


「いや、お二人はいんですか?その、俺なんかで?」


そんな二人にそう聞いてみたが、逆に二人は首を捻る。


「何を仰る。逆に、シーラを嫁に貰ってくれれば、我々の老後も安泰です。断る理由はないでしょう?」

「そうですわ。何なら、もう子作りして頂いても構いませんわよ?」

「アグネス、それはいい考えだ!私も、早く孫の顔が見て見たいしな。シーラ、今日からお前はタクヤさんと閨を共にしなさい。」

「そうですわね。シーラ、ちゃんと夜のお勤めを頑張るのですよ?」


つか、14歳と子供を作っても問題無いと言い切る親ってどうなんだろうか。

しかし俺の意に反して、シーラちゃんの口から出た言葉は


「はい。お父さん、お母さん。今日から、私は旦那様と寝食を共にします!」


かなりノリノリだった。

俺は頭を抱えてしまう。


「えっと・・・一応、全員に結婚は待ってくれと言ってあるんです。なので、先ずはお付き合いからお願いします。」


そう言った瞬間の親二人の顔は、怪訝そうな顔だった。

そんな親の片割れのアランさんがブッ込んで来る。


「では、お付き合いからで妥協しましょう。ただし!閨は共にさせますので。よろしいですね、ご主人?」


そんなブッ飛んだ言葉に、俺はつい「・・・は、はい。」と答えてしまう。

その答えに、喜ぶアランさんとアグネスさん。

隣でモジモジと恥ずかしそうにしているシーラちゃん。

答えて気付くマズい状況に、俺の顔は青褪める。

そんな俺を横目に、三人は話は終わったとばかりに部屋を出る。

その数分後、荷物を抱えたシーラちゃんが俺の元へとやって来た。

そして、荷物を降ろすと


「旦那様、今日からよろしくお願い致します。」


三つ指突いてお辞儀をする。

ヤバい。

これはヤバい!

絶対にみんなから、ロリコンと言われてしまう。

俺はロリコン主義じゃねえ!

しかし、既に後戻りは出来ない。

意を決した俺は、ビシッ!とシーラちゃんに言う。


「お、おう。よろしくな。」


ダサい。

いや、アホか!

俺は「まだ早い!」とハッキリ言えない自分に幻滅した。

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